This is the sharpest image ever taken by ALMA — sharper than is routinely achieved in visible light with the NASA/ESA Hubble Space Telescope. It shows the protoplanetary disc surrounding the young star HL Tauri. These new ALMA observations reveal substructures within the disc that have never been seen before and even show the possible positions of planets forming in the dark patches within the system.

視力6000で見る宇宙【vol.1】天文学者を震撼させた「おうし座HL星」

2014年にアルマ望遠鏡で観測されたおうし座HL星は、惑星系のなりたちの「鍵」を握る要素を捉えた画像として天文学者たちを震撼させた。まるで夜空に浮かぶレコード盤のようなおうし座HL星は、一体どのようにすごいのだろうか? 国立天文台チリ観測所の長谷川哲夫上席教授に、その理由を聞いた。
インタビュー・テキスト:中村俊宏
撮影:豊島望

CGシミュレーションよりもはるかに美しい「隙間」を観測

――アルマ望遠鏡を使って、惑星系が生まれる様子がくっきりと見えるようになりましたが、この「おうし座HL星」の画像からはどんな発見があったのですか?

長谷川:先ほど、恒星や惑星は宇宙をただようガスや塵からできるとお話ししましたよね。図を使いながら、これをもう少し詳しく説明しましょう。

 

惑星形成の模式図

惑星形成の模式図

長谷川:恒星や惑星は、宇宙のなかにあるガスや塵の塊が、自分の重力によってどんどん縮んでいって作られます。縮むと温度と密度が高くなって、重力がより強くなって、さらに縮んでいきます。こうしてガスや塵が塊全体の中心に向かってどんどん流れていくときには、洗面台で水を流すと排水口のまわりに渦ができるように、普通は回転運動が起こります。その結果、ガスや塵の塊は回転する円盤のようなかたちになるんです。

 

――それでこのかたちが生まれるんですね。円盤は回転しているのですか?

長谷川:円盤内のガスや塵は一方向に回転しています。そして円盤の中心には、赤ちゃん星がいますが、ガスや塵が中心に向かってどんどん集まることで中心部の密度と温度が上昇し、エネルギーが発生し、温度が1,500万℃くらいになると核融合を起こして大人の星である主系列星になります。

 

――円盤のなかに、同心円状の暗い隙間のようなものがいくつも見えますが、これって何ですか?

長谷川:これがまさに、アルマの大発見なんですね。この隙間は、円盤内の物質が掃き集められながら、木星のような大きな惑星が成長しつつある証拠だと考えられています。大きな惑星の重力によって、近くにあるガスや塵が惑星に吸い寄せられてしまったので、こういう隙間ができるんです。惑星形成のシミュレーション研究でも、こうした隙間ができることが仮説として予言されていました。

 

Bryden

惑星形成のCGシミュレーション画像 Credit:Bryden et al. (2000)ApJ

――その予言どおりの姿を、アルマが捉えたんですね。

長谷川:そうです。しかも、シミュレーションのCGよりずっときれいですよね。人間の想像より、自然のほうがはるかに美しく、すごいんだと思いました。

 

感動の次に来た、惑星形成の定説を揺るがす疑問

――ちゃんと予言どおり「隙間」が見えたということですが、シミュレーションと違うことは、まったくなかったんでしょうか?

長谷川:それがあるんです。しばらく画像を見るうちに「あれ、でもちょっと待てよ。赤ちゃん星の周囲になんでこんなに隙間があるんだ?」と思いました。

 

――え? 隙間があるのはシミュレーションどおりなんですよね?

 

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長谷川:じつは、これまで円盤のなかにこうした隙間ができるのは、中心の恒星の年齢が1,000万歳くらいの時点だと考えられていたんです。

 

――おうし座HL星は100万歳なので、隙間ができるには若すぎるということですか?

長谷川:そうです。隙間は、大きな惑星ができつつある証拠だとされています。でも、100万歳という非常に若い恒星の周囲で、こんなに多くの大きな惑星が育っているというのは、それまでの天文学で定説とされてきた「標準モデル」では予想されていませんでした。だから、「いったいどういうことだ?」という驚きが、安心感や美しさへの感動の次に来たんです。

 

――標準モデルとは、何ですか?

長谷川:太陽系の惑星がどのように作られたのかを説明する惑星形成理論です。日本の宇宙物理学を牽引された故・林忠四郎先生を中心とする京都大学の研究グループによって、原型が作られ、発展してきました。

 

原始惑星系円盤

惑星形成理論である標準モデルの説明図

――その標準モデルでは、おうし座HL星の円盤の隙間は説明できないと?

長谷川:はい。「標準モデル」では、太陽系の中心星である太陽がある程度完成してから、その周囲にある地球や木星などの惑星が生まれたと考えられていました。ですがおうし座HL星では、中心星が未熟にも関わらず、大きな惑星ができ始めていると思われるので、いままで考えられてきた惑星形成論とも大きく異なるのです。

 

――それまでの惑星形成理論と矛盾することで、天文学者に混乱は起きなかったのでしょうか。

長谷川:じつは、1995年にも同じように惑星研究に関する大発見がありました。それによって、ある意味で「ちゃぶ台返し」が起きてしまって、惑星に関する従来の常識や理論が変わってしまったんです。ただ、その経緯があったからこそ、現在、惑星形成についての研究が非常にホットな領域になっていますし、惑星形成の現場を捉えたアルマの画像が、これほど注目されるのです。

 

長谷川哲夫(国立天文台チリ観測所 上席教授)

長谷川哲夫(国立天文台チリ観測所 上席教授)

1955年、栃木県出身。理学博士。東京大学大学院理学系研究科天文学専攻修了。東京大学東京天文台(現在の国立天文台の前身)助手、同大学院理学系研究科附属天文学教育研究センター助教授を経て、2000年より国立天文台教授。専門は電波天文学で、特に星・惑星系の形成過程の研究を行う。アルマ望遠鏡計画には初期から携わり、国立天文台ALMA推進室プロジェクトマネージャー、合同アルマ事務所副プロジェクトマネージャーなどを歴任。

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