This is the sharpest image ever taken by ALMA — sharper than is routinely achieved in visible light with the NASA/ESA Hubble Space Telescope. It shows the protoplanetary disc surrounding the young star HL Tauri. These new ALMA observations reveal substructures within the disc that have never been seen before and even show the possible positions of planets forming in the dark patches within the system.

視力6000で見る宇宙【vol.1】天文学者を震撼させた「おうし座HL星」

2014年にアルマ望遠鏡で観測されたおうし座HL星は、惑星系のなりたちの「鍵」を握る要素を捉えた画像として天文学者たちを震撼させた。まるで夜空に浮かぶレコード盤のようなおうし座HL星は、一体どのようにすごいのだろうか? 国立天文台チリ観測所の長谷川哲夫上席教授に、その理由を聞いた。
インタビュー・テキスト:中村俊宏
撮影:豊島望

太陽系は「普通」ではなかった?

――1995年の惑星研究に関する大発見とは、いったいどんなことでしょうか?

長谷川:「系外惑星」の発見です。太陽以外の恒星の周囲を回る惑星のことを、系外惑星というのですが、太陽系と同じように、夜空に輝く星々のまわりにも惑星があることが1995年にスイスの天文学者たちによって初めて発見されました。現在までに3,500個以上見つかっています。

 

――3,000個も!

 

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中心星のすぐ近くを回る巨大ガス惑星の想像図 Credit: ESA – C. Carreau

長谷川:そして、太陽系とはかなり違った姿の「惑星系」も多く見つかったんです。たとえば、最初に見つかったペガスス座51番星の系外惑星は、木星の半分の大きさの巨大ガス惑星が、中心の恒星のすぐそばを、たった4日の公転周期で回っていました。木星は太陽から遠く離れた場所を、約12年の周期で公転していますから、太陽系でのあり方とはまったく異なるものなんです。

 

――まさに「ちゃぶ台返し」だったんですね?

長谷川:ええ。いままではみんなが太陽系のようなものが惑星系の標準で、すべてそれと同じようなあり方をしているに違いないと思い込んでいたのに、そうではなくて、太陽系は多様な惑星系のひとつにすぎないとわかったんですね。そうなると、次は「どうして多様な惑星系が生まれるのか?」という問題に注目が集まります。それを議論するには、惑星が作られる現場である原始惑星系円盤の研究が鍵になるんです。

 

――そこで、アルマ望遠鏡の出番なのですね!

長谷川:そうです。アルマ望遠鏡は惑星誕生の研究のためだけに作られたわけではありませんが、アルマを建設している間に系外惑星が見つかって、惑星系についての議論が深まってきたので、じゃあアルマが完成したら惑星系の形成現場を観測しようとなり、研究が活発になったのです。

 

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もしも探査機で「おうし座HL星」に近づいたら?

――アルマで惑星系が誕生している様子を見られるようになったわけですが、もしいま、このおうし座HL星に探査機で行けたとしたら、どんな様子になっているのでしょうか?

長谷川:それはおもしろい質問ですね。おうし座HL星はまわりを薄いガスや塵でおおわれているので、それにさえぎられて地球からは可視光では見えません。しかし、近づくことができたらまさにこの画像のように、光り輝いて見えるでしょうね。中心の赤ちゃん星からの光で円盤の表面が照らされて、それも光って見えると思います。

 

――円盤のなかに突入することはできますか?

長谷川:できるんじゃないですかね。

 

――隕石みたいなものがびゅんびゅん飛び回っていて、危なくないですか?

長谷川:円盤内では塵やガスが同じ方向にぐるぐると回転運動していますが、おうし座HL星の円盤だと、塵のサイズは直径1mmくらいだと思いますし、どの方向から飛んでくるのかわからないといったものではないので、大丈夫じゃないでしょうか。

 

――円盤のなかはどうなっているのでしょうか?

長谷川:円盤内に集まった塵が、中心の赤ちゃん星からの光をさえぎってしまうので、真っ暗になっていると思います。

 

――温度はどうですか?

長谷川:これは場所によりますね。赤ちゃん星は大人の恒星よりも温度が高いので、太陽系でいうと火星軌道くらいの場所で、地球と同程度の温度環境になっていると思います。それよりもずっと外側、円盤の外縁のほうは、本当に冷たい領域になっています。

 

おうし座HL星の観測像は、天文学者への「挑戦状」

――この惑星系は、将来、どのように進化を遂げていくのでしょうか?

長谷川:中心星は、いまは赤ちゃん星ですが、将来的には太陽と似たようなサイズの星に成長すると考えられています。

 

――まわりにある惑星はどうでしょう。

長谷川:いま育ちつつある惑星が順調に育っていくかもしれないし、もしかすると、惑星がなくなってしまう可能性もあります。

 

――惑星がなくなるなんてことがあるのですか?

長谷川:はい。たとえば、円盤のガスと惑星との重力の作用によって、惑星がだんだん中心星のほうへ移動していって、最後には中心星に飲み込まれてしまう、といったことが起こりうるとされています。また、木星のような重い惑星が3つ以上できると、それらの惑星同士の重力の作用によって軌道が不安定になり、惑星系の外に飛び出してしまうようなことも起こります。

 

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2つの太陽を持つ惑星Kepler-16bの想像図 Credit:NASA/JPL-Caltech/R. Hurt

――それは怖いですね……。

長谷川:最新の研究によると、原始惑星系円盤が重いほど、質量の大きな惑星がたくさん生まれやすいと考えられています。最初に、太陽系も昔はこの画像のような姿をしていたと言いましたけど、じつはおうし座HL星の円盤は、かつて太陽系がこんな姿をしていたときの円盤よりも重いとされています。だから、将来の姿は太陽系とは違ったものになるかもしれませんね。

 

――そのあたりは、今後の研究課題ということでしょうか?

長谷川:そうなりますね。今後の期待としては、誕生中の惑星そのものの姿が見たいですね。いまは円盤の隙間を見て、これは惑星ができつつある証拠だと言っているわけですが、アルマの能力を最大限に引き上げれば、できかけの惑星そのものが見えたり、惑星に円盤のガスが吸い込まれていく様子が見えたりするはずです。

 

――それはぜひ見てみたいですね!

長谷川:それから、アルマ望遠鏡の観測技術を活かして円盤にどんな物質が含まれているのかの分析も期待されます。特に生命の材料になる分子がどのくらい含まれているかがわかると、アストロバイオロジー(宇宙生物学)の観点では非常に重要な観測になりますね。

 

――最後に、「おうし座HL星のような若い恒星のまわりで惑星ができつつあるのはおかしい」という話が先ほどありましたが、この問題はどう解決されるでしょうか?

長谷川:研究というのは過去の否定で進歩しますから、このアルマ望遠鏡で観測された画像のように、解釈に困る発見があるほうが、研究者は嬉しいんです。ですから、いまは解釈に困っていても、これから10年くらい研究して、惑星が誕生する仕組みについて新しいことがわかる、そのきっかけとなる画像なのだと思います。

 

――研究者は困りたがっているのですか?

長谷川:その通りです。この画像は、自然界からの「挑戦状」なのです。そして挑戦状に対して答えを出し、従来の教科書を書き換えることが、研究者の使命だといえますね。

 

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国立天文台(東京都三鷹市)にて

参照論文

  • [1] M. F. Skrutskie et al. “Detection of circumstellar gas associated with GG Tauri”, The Astrophysical Journal, vol. 409, page 422-428. Publication in May 1993.
  • [2] R. Kawabe et al. “Discovery of a rotating protoplanetary gas disk around the young star GG Tauri”, The Astrophysical Journal Letters, vol.404, page L63-L66. Publication in February 1993.
  • [3] Y. Kitamura et al. “Investigation of the Physical Properties of Protoplanetary Disks around T Tauri Stars by a 1 Arcsecond Imaging Survey: Evolution and Diversity of the Disks in Their Accretion Stage”, The Astrophysical Journal, vol.581, page 357-380. Publication in December 2002.
長谷川哲夫(国立天文台チリ観測所 上席教授)

長谷川哲夫(国立天文台チリ観測所 上席教授)

1955年、栃木県出身。理学博士。東京大学大学院理学系研究科天文学専攻修了。東京大学東京天文台(現在の国立天文台の前身)助手、同大学院理学系研究科附属天文学教育研究センター助教授を経て、2000年より国立天文台教授。専門は電波天文学で、特に星・惑星系の形成過程の研究を行う。アルマ望遠鏡計画には初期から携わり、国立天文台ALMA推進室プロジェクトマネージャー、合同アルマ事務所副プロジェクトマネージャーなどを歴任。

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