This picture was the 10000th to appear in ESO's photo archive. It was posted to the Your ESO Pictures Flickr group by Adhemar Duro on 30 September 2015. This resource is growing each day with new, wonderful and quirky views of ESO from both the inside and outside. Adhemar's picture is a spectacular night view of Otto, one of the ALMA transporters, with the Milky Way and ALMA antennas as a dramatic backdrop.

アルマ望遠鏡を支える人々① まるでSF映画の世界。巨大車両のプロに訊く

22の国と地域による国際共同プロジェクトでもあるアルマ望遠鏡。このプロジェクトには、研究を行う天文学者だけでなく、いろんな職能を持つ何百人ものスタッフが関わっており、チームワークによって支えられています。
そんなアルマ望遠鏡プロジェクトを支える人々を紹介する今連載。第1回目では、「トランスポーター」という特殊な車両を使って、電波望遠鏡の要である巨大なパラボラアンテナの移動を行うチームの仕事を取材します。まさに「縁の下の力持ち」、エンジニアリング部門のトップである水野範和教授、現地オペレーターのファン・サラマンカさんに話を聞きました。

まるでSF映画の世界! 全長20m、車幅10mというトランスポーターの迫力

—— アンテナを移動させるときの様子を、くわしく教えて下さい。

水野:アンテナの移動作業は、5人1チームで行います。全体を統括する監督者が1人いて、正確かつ安全に移動できるかを常に見張っています。それから、トランスポーターを運転するためオペレーター(運転手)が1人。さらに技術者が3人ついてフォローします。

機械系統担当の技術者の3名のうち2人は、アンテナをトランスポーターに載せる際や設置場所に置く際に巨大なボルトを締めたり外したりします。残り1人は電気系統の技術者で、電源や信号ケーブルなどの取り外し、取りつけを行います。

 

High and Mighty

トランスポーター ©ESO / Enrico Sacchetti

—— 1つのアンテナを移動させるのに、どのくらいの時間がかかりますか?

水野:だいたい3、4時間ですね。ですから天候が安定していれば、午前に1台、午後に1台のアンテナを動かせます。トランスポーターは2台あるので、同時に使えば1日4台のアンテナを動かせますが、2台の同時使用は非常にまれなケースで、基本は1日に1台のトランスポーターを使っています。なぜかと言うと、トランスポーター自体も定期的に保守が必要なうえ、アンテナ移動に関わるスタッフは他にも機械系保守や受信機の取りつけ、取り外しなども兼任しているため、リソースが限られているからです。

 

—— それにしても、トランスポーターは見た目からして大迫力ですね! まるでSF映画の世界から飛び出してきたようです。

水野:大迫力ですよね。車高6m、全長が20m、車幅が10mもあります。片側に14個ずつ、計28個のタイヤがあり、すべて独立駆動で自在に動かせるので、車両を横に移動させたり、その場で回転させたりもできます。さらにはリモートコントロールで運転することもできるんです。

 

First European ALMA antenna on its way to Chajnantor

移動作業中のトランスポーター ©ESO / S. Stanghellini

—— アンテナの重さは100トンもあるうえ、非常に精密なハイテク機器でもありますが、アンテナを安全に運ぶために、トランスポーターにはどんな工夫がされているのでしょうか?

水野:トランスポーターにはエンジンとは独立したディーゼル発電機が1台搭載されており、移動中もアンテナに給電を続けているんです。これにより、超電導受信機(アンテナに搭載されている、集められた電波を電気信号に変換する装置)を極低温に冷やされた状態を保つことができるため、移動完了の数時間後には観測が可能となっています。

さらに、エンジンを2つ積んでいて、もし移動途中に片方がダメになっても、もう一方のエンジンだけでアンテナを安全な場所まで持っていくことができます。タイヤも同じで、1つがコントロール不能になってしまったときは、そのタイヤを接地しないように持ち上げた状態で移動することができます。想定外のトラブルが起こっても、安全にアンテナを運べるように、かなり冗長性を持たせた設計になっているんです。

 

ALMA’s Grand Antennas

移動作業中のトランスポーター ©ESO / S. Stanghellini

 

研究者だけでなく、現地のチリ人とも協業しながら宇宙への理解を深めあう

—— トランスポーターを実際に運転するオペレーターは、とても責任重大な仕事だと思いますが、どのくらいのトレーニングで運転できるようになるのでしょうか?

水野:特殊な技能が必要な仕事ですが、技術だけでいえば2、3か月で習得できると思います。ペーパー試験や、運転時に異常を感知できるかといった安全面の講習も受けてもらいつつ、早い人だと半年くらいで「仮免許」として移動作業を始めたりします。1年経てば、一人前のオペレーターになるという感じでしょうか。

 

—— オペレーターは何人いて、どんなシフトで働かれているのですか?

水野:現在、4人のチリ人のオペレーターにお願いしています。高地での仕事は体にかかる負荷も大きいので、8日働いて6日休みのシフトになります。アルマ望遠鏡プロジェクトは、必ずしも研究者だけのものではなく、現地のチリ人とも協業しながら理解を深めあい、宇宙や望遠鏡の魅力を伝えていくという一面もあるんです。

 

Working with oxygen at 5000m

トランスポーターを運転するオペレーター ©ESO / Max Alexander

—— オペレーターの方々も、もともと天文学の知識や興味のある方が多いのでしょうか?

水野:どちらかというと、仕事を始めてから興味を持つ人が多いですね。朝礼の際にも、アンテナの配列を大きく広げたときの観測画像と、コンパクトに密集させたときの観測画像を見てもらい、「みなさんのおかげで、こういう天体写真が撮れるんだよ」と説明しています。するとオペレーターのみなさんも共感して、モチベーションが変わってくるんですね。

たとえば、天候が数日悪くて配列変更のスケジュールが間に合わなくなると、本来なら1日に1台しか動かさないけれど「今日は、2台動かそう」と提案してくれたこともあります。そのおかげで、翌日から新たな観測ができるようになったときは本当にありがたかったですし、彼らも「良かった」と言って誇らしげにしてくれましたね。

しかし、やはり標高5,000mでの作業には負担やリスクも伴いますし、望遠鏡を設置するためのネジを締め忘れるといった、起きてはいけないヒューマンエラーの原因にもなりかねません。作業量と安全のバランスをとるのも、私たちの重要な仕事の1つになるんです。

 

水野範和(国立天文台チリ観測所 教授)

水野範和(国立天文台チリ観測所 教授)

1997年から南米チリ・ラスカンパナス天文台の名古屋大学の「なんてん」、「NANTEN2」の現地運用、観測所の立ち上げを担当、マゼラン銀河を中心とした観測研究を推進。2008年より、国立天文台においてアルマ望遠鏡の建設、アンテナの性能評価、システム検証等を担当。現在、合同アルマ観測所・アレイ・メンテナンス・グループのマネージャーとして、アンテナや装置の運用・保守、そして将来の新しい機能を追加する開発するチームを率いている。
ファン・サラマンカ(合同アルマ観測所 トランスポーターオペレーター)

ファン・サラマンカ(合同アルマ観測所 トランスポーターオペレーター)

チリ海軍にて21年間、レーダーや航空電子機器、制御や計器を取り扱う電子技術者として勤務。2008年より、アンテナトランスポーターのオペレーターとしてアルマ望遠鏡プロジェクトに参加。

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