アルマの成長が楽しみです

17. アルマ運用開始!解き明かされる銀河形成・進化の謎!

(国立天文台ニュース 2011年10月号掲載)

前回に引き続き、アルマの初期科学運用の話題をお届けします。2011年9月からいよいよ本格的にアルマの科学運用観測が開始されました。現地では、科学評価を行うチームと科学運用のチームが協力し、混成チームを作って、全世界から採択された112 件(内東アジア27 件)の観測プログラムの実行にあたっています。混成チームは科学運用観測と平行して、新たなアンテナや装置を観測システムに接続して試験する作業も行っています。チリの山頂施設では、実際16台以上のアンテナが観測システムに接続され、運用を開始しています(上画像)。

さて、今回は、私たちの銀河系の外にある様々な銀河について、アルマでの観測がもたらす成果をご紹介します。アルマが観測するのは、ミリ波・サブミリ波と呼ばれる波長が数mmから0.1mmまでの電波です。このようなミリ波・サブミリ波は、宇宙では、どのような部分から放射されるのでしょうか?

1つは非常に温度の低い(摂氏マイナス200度以下)宇宙塵や分子・原子のガスから放射されます。このような塵やガスは、銀河の中で星を活発に生成する場所に集まっていたり、銀河と銀河の間に薄く漂っていたりします。そのようなガスや塵からの電波を観測することで、その温度や密度、分量といったものを探ることができます。特に塵やガスの濃い所では、赤外線や可視光線は遮られてしまいますので、唯一電波の観測から多くの情報を得ることができます。また、磁力線の周りで加速された電子や、星や銀河中心核の周りの電離した高温プラズマからも電波が放出されます。このような電波の観測から磁場の強度や向き、ガスを電離する高エネルギーの光子の量を調べることもできます。それではここからは、より具体的な観測対象について、アルマで得られる成果を紹介していきましょう。

銀河の誕生
宇宙開闢の頃に遡り、最初の銀河がいつどのように誕生したのかを探るのは銀河天文学者の夢であり、電波望遠鏡のみならず、すべての巨大望遠鏡はこの課題に取り組んでいると言っても過言ではありません。すばる望遠鏡を使って現在続々とその成果が出つつありますが、まだまだ銀河の誕生の核心を捉えるには至っていないのではないでしょうか。そこでアルマの登場です。銀河も星からできていますので、宇宙の初期におそらく起こったであろう、銀河の誕生、すなわち大きな分子ガスの塊から非常に短い時間に星が一斉に生成され、まわりの分子 ガスを暖めつつサブミリ波で輝き出す様子を非常に高感度で捉えることができるでしょう。アルマでは、すばる望遠鏡とうまくタッグを組んで、“銀河誕生の現場を取り押さえる”ことが期待されています。

銀河の進化
一旦誕生した銀河は、その後、様々な人生(銀河?生)を歩むことがわかってきました。その中でも最も波乱万丈な(激しい)変化が起こるのが、銀河同士の衝突・合体です。以前の研究では、銀河の衝突合体は、宇宙のなかで非常に稀な現象と考えられていましたが、最近の観測から、このような激しい現象が宇宙の初期には頻繁に起こっていたのではないかと考えられるようになりました。ところが、この現象がその後の銀河の進化に及ぼす影響、例えば、合体の結果どのくらいの星がどこに形成されるのか、銀河の中にあったガスはどのように消費されるのか、巨大ブラックホールはできるのか?といった問題はまだよくわかっていません。そこでアルマでは、合体銀河のガスの分布や運動に着目して研究を行うことでその行く末を予言(!?)することもできるでしょう。実際、科学評価のために取得されて最新の観測データから、“アンテナ銀河”と呼ばれるNGC4038・NGC4039で、合体中の銀河の中の分子ガスの運動が詳細に報告されています(下画像)。

最後に
いよいよアルマの初期科学運用が開始されました。最初の科学運用観測は2012年いっぱいまで行われますが、早くも次の科学運用観測の募集が来年5月に予定されています。最初の運用に比べ、アンテナ数や様々な機能においてさらにパワーアップしたアルマに乞うご期待ください。

※ 人物の所属や肩書き、組織の名称等は、執筆当時のものです。