国立天文台と情報通信研究機構、包括的な連携協定を締結

国立天文台と情報通信研究機構は、包括的な連携協定を締結し、2019年12月3日に協定調印式を執り行いました。

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情報通信研究機構 理事長 徳田英幸氏(右)と常田佐久国立天文台長
Credit: 国立天文台

国立天文台と情報通信研究機構はこれまで10年以上にわたって共同研究を行い、特に電波望遠鏡に利用される観測機器の開発を行ってきました。開発された装置はアルマ望遠鏡に搭載され、多くの研究成果を生み出しています。

国立天文台と情報通信研究機構が共同して開発したものに、アルマ望遠鏡バンド10受信機があります。アルマ望遠鏡が観測する電波のうち最も高い周波数帯である「バンド10」は、787~950 GHz(波長およそ0.35mm)という極めて高い周波数を持ち、「テラヘルツ波」とも呼ばれます。従来の電波望遠鏡では、ニオブ(Nb)を用いた超伝導受信機が使われていましたが、バンド10では周波数が高いためにニオブの超伝導状態が破壊されてしまい、良い性能の受信機を作ることができていませんでした。そこで国立天文台と情報通信研究機構の研究者は、より高い動作周波数を持つ窒化ニオブチタン(NbTiN)に着目しました。そして高品質なNbTiN薄膜の作製技術を確立し、世界最高性能のテラヘルツ帯受信機を実現しました [1] 。バンド10受信機はアルマ望遠鏡のアンテナに搭載され、大質量星形成領域に糖類分子グリコールアルデヒドをはじめとする多様な有機分子が存在することを明らかにするなど [2] 、人類がこれまで見ることのできなかった宇宙の姿を明らかにしつつあります。

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国立天文台が開発した、バンド4・バンド8・バンド10受信機(左から順)
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

国立天文台と情報通信研究機構は、電波と光を融合するフォトニック技術の共同研究も行ってきました。アルマ望遠鏡のように複数のアンテナを同時に使用して観測を行う電波干渉計では、各アンテナで得られる信号のタイミングを精密に合わせて最終的なデータを合成する必要があります。これを実現するため、原子時計で作られた基準信号を非常に高い安定性で遠く離れた各アンテナに届けなくてはなりません。国立天文台と情報通信研究機構は、情報通信研究機構が持つ独自の光変調技術をもとに、高周波信号を従来法の1000倍以上の精度で、かつ乱れを30万年に1秒以下という極めて高い安定性で伝送する装置を開発し、世界最高性能の基準光源を実現しました [3] 。この信号発生技術は、アルマ望遠鏡パラボラアンテナの鏡面誤差を測定する装置に搭載されている他、アルマ望遠鏡のアンテナ展開範囲をさらに拡大する「アルマ2」計画に必要な、さらに高品質な基準信号発生装置としても有望です。

今後は、国立天文台と情報通信研究機構がお互いの強みを活かしながら、連携して次世代の技術開発を進めていきます。同時に、人類共有の財産である電波周波数資源についても議論を行い、電波天文学と便利な情報通信社会の共存共栄を実現していく建設的な関係を築くことを目指します。

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