惑星系の化学組成は誕生前から多様?
-アルマ望遠鏡で多くの原始星を化学調査-

理化学研究所(理研)開拓研究本部坂井星・惑星形成研究室のヤオルン・ヤン訪問研究員(研究当時、現バージニア大学天文学科フェロー)、坂井南美主任研究員、イーチェン・チャン基礎科学特別研究員らの国際共同研究グループは、アルマ望遠鏡を用いて、約50個の原始星の周りに存在するガスの化学組成を調べた結果、有機分子の存在量が天体によって大きく異なることを発見しました。

これほど多くの、それも同じ領域にある原始星で、周囲を取り巻くガスの化学組成が調査されたのは初めてであり、本研究成果は原始太陽系の環境の化学的起源の理解に貢献すると期待できます。

今回、国際共同研究グループは、惑星形成の母体となる「原始惑星系円盤」が形成され始める若い天体に着目し、アルマ望遠鏡を用いて、ペルセウス座分子雲に属する約50個の原始星周りのガスの化学組成を調べたところ、天体ごとのガスや塵の総量などの違いを考慮に入れても、メタノール(CH3OH)とアセトニトリル(CH3CN)の存在量は天体によって100倍以上異なることが分かりました。一方で、それらの分子同士の存在量比は良く相関していました。また、より複雑なギ酸メチル(CH3OCHO)あるいはジメチルエーテル(CH3OCH3)のメタノールに対する存在量比は、ガスの密度が高いほど高い傾向にありました。これらの結果は、同じ領域の分子雲で惑星系が誕生したとしても、異なる化学組成の惑星系となり得る可能性を示しているとともに、惑星系形成に伴う有機分子の生成・進化過程の理解の大きな手掛かりとなるものです。

 
本研究は、天文学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル』の掲載に先立ち、オンライン版に近日掲載予定です。

詳しくは、理化学研究所のプレスリリース『惑星系の化学組成は誕生前から多様?-アルマ望遠鏡で多くの原始星を化学調査-』 をご覧ください。

 

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三つの原始星それぞれの周りに存在するガス(メタノールとギ酸メチル)の分布。左から原始星Barnard 1c、IRAS 03235+3004、L1455 IRASS4の周りに存在するメタノール(上)とギ酸メチル(下)の分布。カラーが分子の出すスペクトル線の強度、等高線は星間塵の出す熱輻射の強度を表す。有機分子の存在量が塵の量、すなわち天体の規模によって決まっていないことが分かる。
Credit: 理化学研究所

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