12. 世界の仲間とALMA望遠鏡立ち上げ中なう

(国立天文台ニュース 2011年5月号掲載)

新米研究員の報告です
ファイル 前回の Bienvenido a ALMA ! での立原助教からの報告の通り、3月31日に ALMAの初期科学運用に向けた観測提案の募集 (Call for Proposal) がアナウンスされました。現地では、急ピッチで ALMA 初期科学運用に向けた試験観測が行われています。というわけで、今回はベテラン立原助教に続き、新米研究員、樋口あやから見たCSV(Commissioning and Science Verification; 科学的評価試験)活動をお送りしたいと思います。思えば 学部1年生のときに聞いた「君たちが博士課程の時は、ALMAで観測したデータで論文が書けるでしょう」という長谷川哲夫教授の言葉が記憶にありますが、あれから9年、私はもちろん ALMAのデータを使うことなく、昨年3月に博士課程を終了し 4月にALMA推進室に着任しました。そしてALMA推進室、東アジア地域センターからのCSV活動への派遣(CSVチームでは最年少)ということで、着任早々このような刺激的な環境に放り出されたのです。

私にとっては初めてのチリ出張、また私は海外に留学したこともなければホームステイもしたことがない状態で初めての長期海外暮らし(1年間でのチリ滞在期間はトータルで6か月以上)というわけで、もういろいろ考える余裕などなく、勢いだけでここまでやってきています。ALMAの観測は、標高2900mの山麓施設(OSF)で行われます。ここでの観測シフトでは「最年少だから〜」という言い訳は通用せず、観測シフトの「リード」、つまり1回り、2回り、下手をすると3回りも年上の先輩方を引っ張って観測を進めて行く役割を割当られたりします。ちなみに私がリードの際は皆様にからかわれて大変でしたが、皆さんしっかり仕事をしてくれたのでとりあえずほっとしました。

ライナー・マウエルスバーガー氏とアンテナのパッドポジションを修正しています。「Ayaは信頼できるから一緒にやってくれ」だって。ちなみに私、ものすごい大ざっぱなんですけど。


TW Hya(うみへび座 TW星)のバンド9受信機の観測をしています。バンド9は初期科学運用(サイクル0)で可能な最も高い観測周波数帯で、およそ600GHz-720GHz までの観測が可能です。
左から、薄毛を気にしているホアン・コルテス氏、ヒッピーみたいなビル・デント氏、そして奥に居るのが弁髪が似合うオペレータのホセ・コルテス氏。
さっきまでAKB48の ◯× が好きとか言ってたのに仕事となるとやはり真剣。

百聞は一見にしかず
ALMA の観測現場は「百聞は一見にしかず」、そんな言葉がぴったりです。実際にアンテナのステータスを確認しながら観測を流し、フリンジ(干渉縞)が出ない!とか、アンテナが動かない!というようなトラブルが起こればトラブルシューティングし、一つ一つ原因をつぶしていきます。また、流す観測やトラブルシューティングについて自分の意見をきちんと英語でメンバーに伝えなければいけません。たとえば、以下のような会話が…。

樋口「新しいアンテナがハイサイト(標高5000m)に上がってきたので、アンテナのパッドポジションやケーブルの遅延補正をして、今日の観測にこのアンテナが使えるようにしましょう」。
Tくん「今日は天気がいいから、バンド9(受信機)の観測をやるべきだよ」。
樋口「使えるアンテナ増えた方がサイエンス観測には有利でしょ?」。
Tくん「遅延補正に3 - 4 時間かけるんだったらアンテナ 7台でもサイエンス観測した方がいいよ」。
樋口「プロシージャー整ってきたから、そんなにかからないと思う」。
Aくん「(割り込み)今日、俺が作ったスクリプト流したいんだけど?」。
Tくん「こんないい天気を逃したらこの条件で観測できる日なんてもうないよ?(ちょっとキレ気味…)」。
Aくん「俺が作ったスクリプト、ちゃんとボスに確認取ったから流すよ?」。
樋口(ひぃぃぃ〜ここは動物園!?)

当然シフトメンバーは観測経験値の高い人達なので、彼らを納得させる説明をしないと先に進みません。私にはまだまだ足りていないスキルばかりなので、経験を積んで日々勉強しております。また観測だけでなく、時間を見つけてはサイエンスの議論を行ったり、サイエンストークをさせてもらって、大御所の皆様からコメントを頂いたりして大変刺激的です。またCSVメンバー必須のFacebook も始め、友達も徐々に増え、だんだん仕事ぶりを周りが把握してくれるといううれしい出来事もあります。私には恐れ多すぎるアル・ウッテン氏やトミー・ウィクリンド氏もFacebook 友達で、私のコメントや写真に「いいね!」をくれたりしています。

ここOSF での食事は特に日本人の皆様方にはとても評判が悪いのですが、実際食べてみるとそんなことありません。特に私は日本での食生活がひどい(牛丼連続とか…)ので、OSF 滞在中は毎食、野菜、肉、魚をバランスよく食べることが出来て大変幸せです。とくにスープが美味。みなさん一度お試しあれ。
あと私がはまっているのは、OSF へ行く際に乗るラン・チリ航空の機内で配布されるHAVANNA というお菓子。これはもう中毒です(注:味覚には個人差があります)。

Early Science Cycle 0
間近に差し迫ってきた「初期科学運用 (Early Science cycle0)」。ALMA が動き出せば、幾度となくこれまで教科書で習ってきたことが塗り替えられる事態が起こるのでしょう。今、ALMA は一番大変な時期であり、最もおもしろいステージでもあります。現在、チリ駐在の日本人 CSV関係者はすでに6人。私のようなビジターサイエンティストも含めると、OSFのシフトで日本人がいない時はほぼありません。私達が待ちわびてきたALMAの観測結果が出てくるのはもうすぐです。

※ 人物の所属や肩書き、組織の名称等は、執筆当時のものです。