アルマ望遠鏡 10年の成果

惑星形成の写真Credit: NAOJ

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惑星形成

惑星はどのように生まれてくるのか。アルマ望遠鏡はその高い解像度と感度を存分に生かして、この大きな謎に挑んできました。そこで見えてきたのは、若い星たちのまわりに広がる実に多彩な塵やガスの円盤(原始惑星系円盤)、つまり惑星誕生現場の姿でした。アルマ望遠鏡がもたらすひとつひとつの観測画像が、惑星の誕生に関する研究を一歩ずつ着実に前に推し進めています。

アルマ望遠鏡運用10周年 惑星形成研究の歩み

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

見えた!惑星形成の現場

アルマ望遠鏡が視力2000に相当する解像度で撮影した、おうし座HL星を取り巻く塵の円盤。塵のリングと隙間が幾重にも重なる構造は、天文学者たちを大いに驚かせました。この構造は、どのようにできたのでしょうか。すでに円盤の中に惑星が生まれていてその重力によって作られたという説もあれば、円盤自身の重力によって自然に縞模様ができるという説、円盤内の温度の違いによって縞模様ができるという説など、いくつもの可能性が検討されています。この1枚の画像が、惑星形成の研究を大きく進めたのです。

観測成果:『アルマ望遠鏡、「視力2000」を達成!— 史上最高解像度で惑星誕生の現場の撮影に成功

Credit: S. Andrews (Harvard-Smithsonian CfA), ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

星のすぐ近くで惑星ができる場所

地球から約200光年の距離にあるうみへび座TW星は、私たちに最も近い惑星形成の現場です。中心星のすぐ近くは、光の望遠鏡では星の光にかき消されて観測が困難ですが、電波望遠鏡なら観測することができます。アルマ望遠鏡による観測で、円盤の中心近く、地球の軌道半径と同じくらいの位置に隙間があることがわかりました。ここに地球のような惑星がすでに作られているかどうかはまだわかっていませんが、岩石惑星ができうる場所を直接見ることがアルマ望遠鏡によって可能になってきたのです。

観測成果:『地球に似た軌道を持つ惑星の誕生現場を若い星のまわりで初めて観測

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Tsukagoshi et al.

惑星ができる場所をピンポイントで特定

同じくうみへび座TW星のまわりの塵の円盤では、惑星が誕生する場所をピンポイントで特定することにも成功しました。アルマ望遠鏡による観測で、円盤内に小さな電波源が見つかったのです。これは、すでに円盤内で海王星サイズの惑星ができていて、そのまわりに集まった塵を見ているのかもしれません。あるいは、円盤内で塵が掃き集められてこれから惑星ができる場所を見ているのかもしれません。いずれにしても、惑星が作られる過程の重要な一場面を捉えたといえます。

観測成果:『アルマ望遠鏡、惑星誕生の現場をピンポイントで特定

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), S. Andrews et al.; NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello

十人十色の惑星誕生現場

ひとつひとつの原始惑星系円盤を詳しく調べるのに加えて、たくさんの円盤を観測して共通点や相違点を調べることも、どんな惑星がどんな環境で作られるのかを理解するためには欠かせません。アルマ望遠鏡は、多くの若い星の回りを観測し、多彩な惑星誕生現場の様子を撮影しました。中心の星の大きさによって、あるいはその進化の程度によって、円盤の姿はどのように変わるのか。惑星ができあがるには、どれくらいの時間がかかるのか。まだ解かれていない謎を明らかにするため に、アルマ望遠鏡による観測が続いています。

観測成果:『アルマ望遠鏡がシャープにとらえた惑星誕生20の現場

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO); A. Isella.

惑星の回りで、衛星ができる場所まで見えた!

アルマ望遠鏡が、若い星PDS 70の原始惑星系円盤を撮影しました。太いリング状の円盤のすぐ内側、中心の星の右側に、小さな電波源が写し出されています。実はこの場所には、すでにできあがった惑星があることがわかっていました。アルマ望遠鏡が見つけた電波源は、この惑星を取り巻く塵の円盤(周惑星円盤)です。この小さな円盤の中で塵が合体成長していくと、衛星ができるかもしれません。アルマ望遠鏡は、太陽系外惑星の回りで衛星ができる現場までも目撃することに成功しているのです。

観測成果:『若い星のまわりで見つかった「衛星を作る」周惑星円盤