アルマ望遠鏡 10年の成果

技術開発の写真Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

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技術開発

アルマ望遠鏡は2011年に科学観測を開始しましたが、その後も望遠鏡に関連する技術開発は続いています。他の望遠鏡による観測や理論研究の進展によって、天文学も日進月歩。アルマ望遠鏡による多くの発見と同時に、自身がもたらした新たな謎もあります。そして、新たな謎に挑むためには、アルマ望遠鏡も立ち止まることなく前に進む必要があります。2011年の観測開始以来、アルマ望遠鏡は使えるアンテナの数、受信機の種類、アンテナの展開範囲をどんどん拡大し、性能を向上させてきました。そして将来に向けて、さらなる開発を加速させていきます。

Credit: ASIAA

新たな周波数へ バンド1受信機ファーストライト

アルマ望遠鏡では、観測する電波を10の周波数帯(バンド)に分け、それぞれに専用の受信機を開発しました。つまり、ひとつひとつのアンテナに10種類の受信機が搭載されるわけです。2011年には4種類の受信機で観測を開始しましたが、受信機の開発はその後も進み、より多様な周波数での観測を可能にしています。2021年8月、最も低い周波数(35~50 GHz)を観測するバンド1受信機による初観測が成功しました(ファーストライト)。バンド1受信機は、台湾中央研究院天文及天文物理研究所を中心に、国立天文台などの国際協力で開発されました。これにより、アルマ望遠鏡を使った冷たい宇宙の観測がさらに前進することが期待されます。

ニュース記事:『アルマ望遠鏡バンド1受信機、ファーストライトを達成』

Credit: 大阪府立大学

宇宙への窓を広げる、広帯域同時観測

電波望遠鏡は一般的に、一度に観測できる電波の周波数の幅が決まっています。一方、広い周波数帯域の電波を同時に観測すればするほど観測効率は向上します。例えば、さまざまな種類の分子が放つ電波を一度にとらえたり、超遠方にある銀河からの電波の周波数を効率よく特定したりできます。大阪府立大学と国立天文台は、これまでよりずっと広い周波数帯域を一度に観測できる受信機を開発し、国内の望遠鏡で試験観測に成功しました。この技術をアルマ望遠鏡の次世代受信機に活かせば、アルマ望遠鏡の観測性能・観測効率もさらなる向上が期待できます。

ニュース記事:『世界初!宇宙空間の多くの分子からの電波を同時に受信するシステムの開発に成功 ―宇宙の進化や星・惑星が形成されるメカニズムの解明に向けて―』

Credit: NAOJ/KASI

GPUを使った新分光計開発

アンテナで集められた天体からの電波は、アンテナ内に搭載された受信機に導かれ、電気信号に変換されます。その信号は、専用のコンピュータに送られて処理されます。多数のアンテナからの信号を処理する相関器と、個々のアンテナからの信号を処理するデジタル分光計です。韓国天文宇宙科学研究院と国立天文台は、アルマ望遠鏡の日本製12mアンテナ4台から送られてくる信号をより効率よく処理するため、3Dグラフィックスを描画する際に使用されるGPUの技術を活用し、新たなデジタル分光計を開発しています。これにより、アルマ望遠鏡の性能、特に電波の強度を精密に測定する能力を最大化することを目指しています。この新分光計は、2022年2月22日に天体からの電波を初めて検出する「ファーストライト」に成功しました。

ニュース記事:『ACAトータルパワーアレイ新型分光計、ファーストライトを達成』

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

アルマ2計画:2030年代に向けて

アルマ望遠鏡は、さらに未来を見据えています。国立天文台は、2020~2030年代に挑むべき次の科学目標とそのために必要なアルマ望遠鏡の機能強化についての議論を、国内外の研究者コミュニティと協力して行ってきました。その結果練り上げられた計画を、国内では「アルマ2」計画と称します。この計画では、現在のアルマ望遠鏡に比べて感度を約2倍、空間解像度を2倍以上、同時観測可能な周波数帯域を2倍以上に拡張し、地球型惑星形成領域における惑星系形成過程の理解、惑星系誕生過程での生命素材物質の理解の飛躍的前進、そして宇宙における元素合成の開始地点の探究を目標に掲げます。アルマ望遠鏡が最初の10年で天文学にもたらした進展をさらに推し進め、人類普遍の真の知的財産を生み出すことを目指します。引き続き、ご支援のほどよろしくお願いします。

ニュース記事:『「アルマ2」計画の推進について』