アルマ望遠鏡 10年の成果
想像図:Credit: Jordy Davelaar et al./Radboud University/BlackHoleCam
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ブラックホール
光も吸い込んでしまう謎の天体、ブラックホール。宇宙には、たくさんのブラックホールが存在します。特に、銀河の中心に潜み太陽の数百万倍から数十億倍もの質量をもつ超巨大ブラックホールは、銀河の進化にも大きく影響を与えていると考えられ、天文学者も注目しています。アルマ望遠鏡は、ブラックホールを取り巻くガスが放つ電波をとらえ、ブラックホールの周囲の環境を明らかにし、またブラックホールが銀河進化に与える影響を探ってきました。さらに、世界中の望遠鏡と協力してブラックホールの影の撮影にもアルマ望遠鏡は大きく貢献しました。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Imanishi et al.
巨大ブラックホールを取り巻くガスと塵のドーナツ
猛烈な重力で周囲の物質をひきつけ、一部はジェットとして遥か彼方まで吹き飛ばす巨大ブラックホール。こうした激しい活動 をする巨大ブラックホールは「活動銀河核」と呼ばれます。これまでの観測から、活動銀河核の回りをガスと塵でできたドーナツ状の構造が取り巻いていると考えられてきましたが、数十年にわたってその姿を捉えたことはありませんでした。そこでアルマ望遠鏡は、渦巻銀河M77の活動銀河核を観測し、回転するガス構造を発見。しかしそのガスは、予想よりずっと複雑な動きをしていました。発見とともに新しい謎が生まれる、アルマ望遠鏡の成果の好例です。
観測成果:『活動的な超巨大ブラックホールを取り巻くガスと塵のドーナツ ― 予言されていた回転ガス雲を初めて観測で確認』
想像図:Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)
太古の昔から吹き荒れる、ブラックホールの嵐
銀河の中心に存在する巨大ブラックホールは、周囲のガスを巻き上げたり、ブラックホールを取り巻くガス円盤からの強烈な放射で周囲のガスを破壊したりします。ガスは銀河の主要構成要素である星の材料ですから、ブラックホールは銀河の進化に大きな影響を与えます。アルマ望遠鏡は、131億年というはるか昔に存在した銀河の中で、強烈な「嵐」が吹き荒れていることを発見しました。そのエネルギー源は、この銀河に潜む超巨大ブラックホールと想定されます。これほど昔から、銀河とブラックホールはお互いに影響しあいながら進化してきたのです。
観測成果:『観測史上最古、131億年前の銀河に吹き荒れる超巨大ブラックホールの嵐』
想像図:Credit: NOIRLab/NSF/AURA/J. da Silva
巨大ブラックホールは、いつから存在したのか?
銀河の中心にある超巨大ブラックホールは、宇宙の歴史の中でいつどのように誕生したのか。これはまだ解かれていない大きな謎です。アルマ望遠鏡は、131億年前の宇宙に存在した銀河にも、超巨大ブラックホールがすでに存在していることを明らかにしました。観測史上最古の巨大ブラックホールです。138億年前のビッグバンからわずか7億年で、太陽の16億倍の質量をもつ巨大なブラックホールができていたことがわかりました。これほど巨大なブラックホールが数億年でできてしまうことに研究者は驚き、そのメカニズムはさらに大きな謎となりました。
観測成果:『観測史上最遠のクエーサーを131億光年彼方に発見』
Credit: EHT Collaboration
世界の望遠鏡と協力、ブラックホールの影を捉えた!
ブラックホールは、周囲を回るガスや星の動きなどから間接的にその存在が明らかになっていました。しかし、誰もその写真を撮影したことはありませんでした。イベント・ホライズン・テレスコープ計画は、アルマ望遠鏡を含む世界の8つの望遠鏡で同時にブラックホールを観測し、その影を撮影するプロジェクト。2017年、地球から5500万光年離れた楕円銀河M87の中心にある超巨大ブラックホールの観測が行われ、結果の画像が2019年に公開されました。人類が初めて目にした、ブラックホールの画像です。アルマ望遠鏡は参加8局の中で最大の感度を誇り、この撮影に大きく貢献しました。
観測成果:『史上初、ブラックホールの撮影に成功 ― 地球サイズの電波望遠鏡で、楕円銀河M87に潜む巨大ブラックホールに迫る』