アルマ望遠鏡 10年の成果

銀河形成の写真Credit: ESO/M. Kornmesser

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銀河形成

私たちは、数千億の星が集まった天の川銀河に住んでいます。一説には、宇宙にはこうした銀河が何兆個もあるとされています。では、138億年の宇宙の歴史の中で、銀河はいつどのように生まれ、どのように成長してきたのでしょうか。アルマ望遠鏡は、130億年以上昔の銀河に酸素や塵が含まれていることを発見し、理論的な予想よりずっと早くに成熟する銀河をいくつも見つけました。アルマ望遠鏡は、宇宙の歴史を紐解くヒントをたくさん見出してきたのです。

アルマ望遠鏡運用10周年 宇宙の歴史をさかのぼる

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), T. Tsukui & S. Iguchi

渦巻型の銀河は、いつから存在するのか?

私たちが住む天の川銀河は、渦巻きの形をしています。では、こうした銀河は宇宙の歴史の中で、いつごろから存在していたのでしょう? 高い感度と解像度を兼ね備えるアルマ望遠鏡は、124億年前の宇宙に渦巻腕を持つ銀河を発見しました。この銀河BRI 1335-0417は天の川銀河の1/3ほどの大きさで、中心部にガスが集中している構造やガスの動きも一般的な渦巻銀河によく似ていました。一方、活発に星を作るこの銀河はやがて巨大楕円銀河へと進化していく可能性もあります。この渦巻型銀河の発見は、銀河の形の変遷をたどる研究にさまざまな示唆を与えてくれます。

観測成果:『観測史上最古、124億年前の宇宙に渦巻き構造を持つ銀河を発見

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), M. Neeleman; NRAO/AUI/NSF, S. Dagnello

ビッグバンから14億年後に、成熟した銀河

ビッグバン以来138億年の歴史の中で、たくさんの小さな銀河が合体して大きな銀河が作られた、と多くの理論研究は示唆しています。これが事実なら、合体が盛んに起きた昔の銀河の形や内部のガスの動きは大きく乱れているはずです。しかしアルマ望遠鏡は、宇宙誕生から14億年後の宇宙に、整然と回転する銀河を発見しました。従来の理論予測よりずっと早い時期に銀河の合体が落ち着き、成熟した銀河が生まれていたのです。そのメカニズムはまだ分かっておらず、銀河形成理論に疑問を突きつける重要な成果と言えます。

観測成果:『銀河形成理論に再考を迫る、宇宙初期の回転円盤銀河

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), ESO, Fudamoto et al.

宇宙の初期にひっそり隠れていた銀河を発見

銀河に含まれる塵は、星や惑星の材料になります。塵は星の光をさえぎってしまうため、塵を豊富に含む銀河は可視光や赤外線では観測しづらく、強力なハッブル宇宙望遠鏡やすばる望遠鏡をもってしても見落とされる銀河があります。しかし塵が放つ電波をキャッチすれば、「見えない銀河」を見つけることができます。実際にアルマ望遠鏡は、131億年前の宇宙に塵に隠された銀河を偶然発見。この時代の銀河は5個に1個がこうした「隠れ銀河」で、これまで見過ごされていたのです。アルマ望遠鏡は、光で見えない宇宙を探ることで銀河の進化を解き明かそうとしています。

観測成果:『観測史上最古の「隠れ銀河」を131億年前の宇宙で発見

Credit: 国立天文台, ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

131億年前の銀河に、酸素を検出

私たちの体に欠かせない酸素は、宇宙の始まりには存在しませんでした。多くの元素は星の内部で作られ、星の死によって宇宙空間にばらまかれたものです。 銀河の中で星の生死が繰り返されて、宇宙に多様な元素がたまっていくのです。2016年、日本の研究チームはアルマ望遠鏡を使って遠方銀河に酸素を検出しました。この銀河は、すばる望遠鏡が発見した131億年前の銀河SXDF-NB1006-2。138億年前のビッグバンから7億年の間に星の誕生と死が重ねられ、酸素が蓄積されたのです。しかしこの発見は、アルマ望遠鏡による「最古の酸素」検出記録ラッシュの始まりに過ぎませんでした。

観測成果:『アルマ望遠鏡、観測史上最遠方の酸素を捉える

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NASA/ESA Hubble Space Telescope, W. Zheng (JHU), M. Postman (STScI), the CLASH Team, Hashimoto et al.

132億8000万年前、酸素の最古記録をさらに更新

2017年、欧米の研究者がアルマ望遠鏡を使って132億年前の銀河に酸素を検出しました。酸素検出最古記録の更新です。しかし2018年、日本と欧米の共同チームによって、132億8000万年前の宇宙に存在した銀河に酸素が発見され、記録はさらに更新されました。この銀河MACS1149-JD1が放つ光や酸素の量から、この銀河では宇宙誕生後2億5000万年後くらいから星が生まれ始めたことも明らかになりました。アルマ望遠鏡は、私たちの体をつくる元素のルーツをたどりながら、宇宙の一番星が作られた時代にも迫りつつあるのです。

観測成果:『アルマ望遠鏡、132.8億光年かなたの銀河に酸素を発見 ― 酸素の最遠方検出記録をさらに更新