アルマ望遠鏡 宇宙画像10選

アルマ天文台の夜の写真Credit: A. Duro/ESO

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アルマ望遠鏡は、その高い感度と解像度を活かして、はるか彼方にあるいろいろな天体たちの多様な姿を写し出してきました。太陽系内の天体から、生まれくる星から一生を終えようとする星、そしてはるか彼方に浮かぶ巨大な銀河まで。ここでは、「10年の成果」で取り上げなかった種類の天体を中心に、アルマ望遠鏡がとらえた美しい画像たちをご紹介します。

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

すべての生き物が頼る星・太陽の素顔

アルマ望遠鏡は、日々私たちを照らしてくれている太陽を観測することもできます。この画像は、2015年12月18日に撮影された、太陽の黒点です。黒点は太陽の内部から磁力線が飛び出している場所で、周囲より温度が低いために光も電波も強度が弱いので、黒く見えます。黒点のまわりでは強い磁場のはたらきで爆発現象などが発生します。アルマ望遠鏡は黒点周辺の温度を精密に測ることで、さまざまな太陽活動が起きるメカニズムを解き明かそうとしています。

観測成果:『アルマ望遠鏡、太陽観測を開始』

Credit: NOIRLab/NSF/AURA/J. da Silva

木星の衛星エウロパの素顔

木星の衛星エウロパは、氷に覆われた天体です。アルマ望遠鏡は、その氷の表面から発せられる電波の強度を精密に観測することで、エウロパの表面温度を測定しました。温度が高い地点からは電波が強く、温度が低い地点からは電波が弱いのです。エウロパの全体を観測した結果、表面の氷の温度にむらがあることがわかりました。エウロパの表面の氷には裂け目があり、また氷の下には海が広がっているのではないかという研究結果もあります。エウロパの温度地図を描くことは、表面の様子を知るだけでなく、氷の下の海や海底の活動の様子を知る手がかりも与えてくれます。

観測成果:『アルマ望遠鏡が描く衛星エウロパの温度地図』

Credit: Bill Saxton, ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), NRAO/AUI/NSF

渦巻の中で生まれる三つ子星

太陽はひとりっ子の星ですが、宇宙にある星の半分以上は、双子や三つ子として生まれると考えられています。アルマ望遠鏡は、三つ子星が生まれる現場を捉えることに成功しました。ペルセウス座にあるこの星L1448 IRS3Bは、中心にふたつの星があり、これを取り巻く渦巻状のガス円盤の中に、3個目の星が作られつつあります。三つ子の年齢は15万歳より若く、3個目は1~2万歳とさらに若いと考えられています。

観測成果:『ガスと塵の円盤の中で生まれる三つ子の赤ちゃん星』

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), J. Bally; B. Saxton (NRAO/AUI/NSF); Gemini Observatory/AURA

宇宙花火 オリオンKL

大きく羽を広げたように見えるのは、冬の星座でおなじみのオリオン座にある、オリオンKLと呼ばれる天体です。この天体の近くではとても活発に、しかも星が集団で生まれています。そこで生まれた巨大な赤ちゃん星たちが、今から500年ほど前にお互いにぶつかった、あるいは危険なほど近くを通り過ぎたことがありました。写真の中で花火のように広がるガスは、この現象によって、星たちを取り囲んでいた物質が宇宙空間に飛び散ったようすだと考えられています。

観測成果:『アルマ望遠鏡が捉えた宇宙花火 —オリオン大星雲の不思議な巨大赤ちゃん星たち』

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

渦巻きの中に潜む老人星

アルマ望遠鏡が撮影した、ちょうこくしつ座R星。年老いたこの星は、自らを形作るガスを間欠的に噴き出しています。ちょうこくしつ座R星のすぐ近くを回る見えない伴星の重力によって、噴き出したガスが大きくかき混ぜられ、この印象的な渦巻き模様が作り出されました。このガスの中には、星の内部でつくり出された様々な元素が含まれています。この渦巻き模様は、この星がどのように一生を終え、元素がどのように宇宙に広がっていくかを理解する手がかりを与えてくれます。

観測成果:アルマ望遠鏡が見つけた不思議な渦巻き星 - 新たな観測でさぐる、死にゆく星の姿

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Olofsson et al. Acknowledgement: Robert Cumming

連星系を成す星の最期

年老いた星は大きく膨らみ、周囲にガスをまき散らします。アルマ望遠鏡が観測したHD 101584という星は、双子の星です。ひとつの星が大きく膨らみ、もう一つの星はその中に取り込まれてしまったと考えられます。しかし、取り込まれてしまった星もまだ相手の星の中心のまわりを回り続けており、その影響で大量のガスが周囲にまき散らされています。こうした星を研究することで、連星を成す星たちがどのように最期を迎えるのかを理解することができます。この画像では、星から異なる速度で噴き出すガスを3色で色分けして表示しています。

観測成果:アルマ望遠鏡がとらえた、連星系を成す星の最期

Credit: NRAO/AUI/NSF, B. Saxton: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO); NASA/Hubble

星のゆりかごが渦巻く銀河

アルマ望遠鏡とハッブル宇宙望遠鏡で観測した、渦巻銀河M74。可視光を観測するハッブル宇宙望遠鏡は銀河の中の星たちを、電波を観測するアルマ望遠鏡はガスの広がりを写し出しました。ガスは星の材料であり、ガスがたくさん集まった場所はまさに「星のゆりかご」です。銀河の中に星の材料がどれくらいあり、星はどんなペースで作られていくのか、銀河の成長史を紐解く手がかりを、アルマ望遠鏡は与えてくれます。

観測成果:『74個の銀河に3万個の星の工場 – アルマ望遠鏡が挑む銀河と星形成の謎』

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO). Visible light image: the NASA/ESA Hubble Space Telescope

アルマ「最初の1枚」:触角銀河

2011年10月3日、アルマ望遠鏡が科学観測を開始したことを告げるプレスリリースが発表されました。その中に含まれていたのが、ハッブル宇宙望遠鏡とアルマ望遠鏡で観測した触角銀河(アンテナ銀河)の写真でした。赤や黄色で色付けされているのがアルマ望遠鏡で観測したガスの広がりで、衝突しつつあるふたつの銀河のそれぞれの中心や、まさに衝突が起きている銀河の左側にガスが密集していることが見て取れます。この画像は、アルマ望遠鏡による天文学研究の幕開けを告げるものになりました。

観測成果:

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), Kitayama et al., NASA/ESA Hubble Space Telescope

遠くの銀河団を取り巻く高温ガス

星やガスの大集団である銀河は、さらに集まって銀河団を作ります。これまでの観測から、銀河団は数億度という超高温のガスに包まれていることがわかっています。アルマ望遠鏡は、地球から48億光年の距離にある銀河団RX J1347.5-1145を観測し、その周囲の広がる高温ガスによる「スニヤエフ・ゼルドビッチ効果」を描き出しました。これは、ビッグバンの名残の電波である「宇宙マイクロ波背景放射」が高温ガスと衝突し、より高エネルギーの電波となって地球に届く現象です。アルマ望遠鏡は、ビッグバンの名残火を手掛かりに、宇宙の進化を解き明かそうとしています。

観測成果:『スニヤエフ・ゼルドビッチ効果を史上最高解像度で観測に成功』

Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO); B. Saxton NRAO/AUI/NSF; NASA/ESA Hubble Space Telescope

アルマが見た完全なアインシュタインリング

地球から117億光年の距離にある銀河SDP.81が、まるでリングのように見えています。これは、SDP.81と地球の間に存在する別の銀河の重力によって、SDP.81から届く電波の道筋が曲がっているためです。重力がレンズのように働くため、「重力レンズ」効果と呼ばれます。また、この現象が相対性理論で予言されたため、このような天体を「アインシュタインリング」と呼ばれます。重力レンズでは遠くの天体が大きく拡大されるため、まるで天然の望遠鏡のように働き、遠くの天体を非常に詳しく観測することができます。SDP.81は、私たちが住む天の川銀河の500倍という猛烈な勢いで星を生み出す、爆発的星形成銀河のひとつです。

観測成果:『アルマ望遠鏡、遠方銀河と小惑星を超高解像度で撮影』