アタカマ便りも、いよいよ最終回となりました。これまでは主に、アルマの建設現場やサンチャゴ周辺の様子を中心にお伝えしてきましたが、今回は、4000km以上におよぶチリの北から南への風景の変化をご紹介します。
建設現場に最も近いサンペドロ・デ・アタカマの町の西、車で30分ほど行ったあたりに、「月の谷」と呼ばれる観光スポットがあり、褶曲と侵食によってできたクレーターのような地形(写真1)を見ることができます。この近くでは、昔は岩塩を採掘していたようですが、現在は行われていません。いまでも近くを歩くと、岩塩の結晶を拾うことができますが、湿度の高い日本に持ち帰ってしばらくすると、岩塩の綺麗な結晶の表面が溶けてしまいます。この町から南に向かうと、広大なアタカマ塩湖があります。大部分が乾燥した岩塩状態ですが、ところどころに豊富な水量の小さな湖があり、フラミンゴの生息地として、また死海の体験ができる場所としても有名です。
サンペドロ・デ・アタカマから1100km南下すると、人口約600万の首都サンチャゴがありますが、そこから100km ほど西に行くと、太平洋岸に出ます。この海岸一帯で一番大きな港町バルパライソは、国会議事堂もある政治の中心で、サ
ンチャゴより歴史の古さを感じさせる町です。海岸からすぐに立ち上がる斜面に建つカラフルな家々、「アセンソール」と呼ばれるレール式エレベーターや狭くて急な階段、壁にモダンな絵が描かれた家並みなど、とても魅力的な町です(写真2)。この付近の海岸一帯は、寒流のため、より標高の高いサンチャゴより気温が低く、避暑地といった感じです。
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写真2:世界遺産に登録されているバルパライソの町並み。 |
サンチャゴからさらに800kmほど南下した南緯40度を越える一帯は、アンデスを挟むチリ側とアルゼンチン側を総称してパタゴニアと呼ばれ、急峻な山々や広大な氷河、そして氷河が流れ込む美しい湖の姿を楽しむことができます。南緯50度(サンチャゴから2000km)あたりには、有名なパイネ国立公園があり、トーレス・デル・パイネの急峻な岩峰(写真3)や代表的な氷河であるグレイ氷河があります。この一帯を歩くと、グアナコ(リャマやビクーニャと似たラクダ科の動物)や狐と出会うことがあり、これも楽しみの一つです。チリ側からアンデスの山を越えて、アルゼンチン側に入ると、これも有名なロス・グラシアレス国立公園に行くことができます。この一帯には、たくさんの氷河がありますが、その代表的なペリト・モレノ氷河では、氷河上をトレッキングしたり、轟音を立てて崩落する大きな氷塊が水面に大きな波を立てるのを観測することができます。氷河を見てまず驚くのはその青さです。空が灰色の曇り空でも氷河自体はとても青く、とても神秘的です(写真4)。
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写真4:ペリト・モレノ氷河(アルゼンチン側パタゴニア)。 |
このように、チリは、北の砂漠地帯から南の氷河地帯まで、とても変化に富んだ景観があり、まさに自然の宝庫と言えます。