「犬も歩けば棒にあたる」とよく言いますが、私は「棒」を好事と解釈し、「犬も歩かなければ、棒にあたらない」と自分に言い聞かせて、ひたすら歩くようにしています。珍しい木や花、人々の暮らしぶり、料理が美味しそうなレストラン、新鮮な野菜・果物を売っている小さな八百屋などなど、歩くといろいろな出会いがあって楽しいです。しかし、時にはあたって欲しくないものもあります。あるとき、横断歩道の端を渡っていたら、ゴツンという音がしました。振り向くと、なんと横を走っていたバスの角が背負っていたリュックに当たったのです。サンチャゴの交差点は「歩行者優先」ではないので、道路を横断するときは、車との競り合いで大変緊張します。さらに交差点では、赤信号で停車中の車に、新聞、花束、野菜などを売ったり、曲芸を披露してお金をもらう人達がいます。写真1のように竹馬に乗った芸人も見かけますが、あの高さで運転手に手が届くのかしらと心配してしまいます。
サンチャゴ旧市街の中心部には歩行者天国のような道路があり、週末には芸人がいろいろなストリー
ト・パフォーマンスを披露しています。写真2は、モダンな踊りをしている芸人。大変情熱的でアクロバチックな踊りで、さすがラテン系という感じでした。5月3日には、偶然に、ボリビアのTinkuという踊りの行列を見ることができました(写真3)。きれいな民族衣装をまとい、フォルクローレ調の音楽に合わせた調子の良い踊りで、すっかり見入ってしまいました。
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写真3:サンチャゴ旧市街を練り歩くTinku 踊り。 |
Tinkuというのは、ケチュア語(インカ帝国の公用語)で「衝突」を意味する言葉で、本 来は殴りあいをして死者が出るほど乱暴な喧嘩祭りのことだそうです(在ボリビア日本大使館ホームページより)。サンチャゴで偶然見た踊りは、たしかに躍動的でしたが、喧嘩という雰囲気はありませんでした。なにか用事があって出かけても、このような楽しい出会いがあると、ついつい時間がたつのを忘れ、肝心の用事を果たせないことが多々あります。
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写真4: サンチャゴ市立劇場とオペラ開演を待つ人々。 |
10月末、旧市街にあるサンチャゴ市立劇場(写真4)を見に行ったら、なんとオペラにあたりました。劇場正面入口で開演を待つ人々が行列していましたが、切符売り場が閉まっていたので、楽屋口を覗きました。その窓口で聞いたら、今日はオペラ「フィガロの結婚」のプレミアショーで、全席招待席のため一般のチケット販売はしないということでした。私がさぞ落胆した顔つきをしていたのでしょうか、楽屋口のおじさんが、「ここでちょっと待ってなさい、招待券を探してあげるよ」といって消えました。10分ほどで、おじさんが招待券を手に戻ってきました。おかげで、無料で3時間のオペラを楽しむことができ、とてもラッキーな一日となりました。チリの人々は、とても親切で人懐っこい感じです。