今回も、前回に引き続き、サンチャゴの珍しい木や花たちをご紹介します。初夏になると、ジャカランダやブーゲンビリアの花で、街は一気に色づいてきます。特にジャカランダは街路樹として多く使用されているので、花が咲くとよく目立ちます。木全体にびっしりラッパ形をした薄紫色の花が咲きますが、1~2週間くらいで散ってしまい、桜が散った後のように道路が紫の花びらの絨毯となります。花が散った後には、写真1のような緑色の実がなりますが、表皮は硬く、解剖してみると中に種があります。実の表面が波打っており、枯れて茶色となった実が貝のようにうっすら開いて地上に落ちます。
ブーゲンビリアも南国の雰囲気を醸し出す木ですが、様々な色があります。赤系統のものが馴染み深いですが、紫色や白っぽいブーゲンビリアもあり、紫色のものは遠目にはジャカランダと区別がつきません。この木は、民家の庭に植えられていることが多いのですが、2階建ての屋根にせまる背の高い木もあります(写真2)。ブーゲンビリアについては、実は大変な誤解をしていました。紫や赤の「ブーゲンビリアの花」と思っていたのは、実は花を包む特別な葉でした。近寄ってみると、その中に小さな白い花がありました(写真3)。思い込みというのは恐ろしいものです。
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写真3:紫色の葉に包まれたブーゲンビリアの白い花。 |
街を歩いていると、写真4のようなアロエの一種でアロエベラをいう大きな植物に出会います。この葉も食用で、ときどきスーパーの野菜や果物のコーナーで売っています。生の状態ではとろみがあり、ヨーグルトの中に入っているアロエと同様に味がありません。お吸い物に入れてみたら、ところてんのような食感でした。この他、サンチャゴのような大都会にサボテンがあるのもびっくりします。サボテンの実もフルーツとして売られています。果肉は柔らかくさわやかな甘さですが、中に硬い種が沢山入っており、種を吐き出しながら食べるのに苦労します。チリ人に聞くと、種も噛み砕いて食べるそうです。
サンチャゴで驚くことは、熱帯性のブーゲンビリアや、朝顔や紫陽花など日本の夏の花が、初冬まで咲いていることです。一方、まだ春にならないのに、タンポポやミモザの黄色い花が咲くこともそうです。サンチャゴの気温は、夏季が13℃~30℃、冬季は4℃~15℃というように、一日の変化が激しいのですが、平均気温でいえば冬季もそれほど寒くないためではないかと思っています。さらに不思議なことは、街の中に木や草花は多いのに、昆虫が少ないことです。花と昆虫は切っても切れない縁のはずなのですが、日本と比べると、昆虫を見る機会が圧倒的に少ないです。ある時、ようやく蜂とモンシロチョウとおぼしき蝶を見つけ、少し安心しましたが、この謎はまだ解けていません。