今回は、話題ががらりと変わりますが、サンチャゴの珍しい木や花たちをご紹介します。サンチャゴの街を歩くと、背の高いヒマラヤ杉やとても幹の太い椰子の木が目につきます。夏場は雨がほとんど降らないのに、このような巨木やそのほかの街路樹がよく育っています。これは、アンデスの雪解け水が豊富なのと、市民が水遣りに熱心なためではないかと想像しています。サンチャゴでは日差しがとても強いのですが、多くの通りに葉が茂った街路樹があるため、暑い日差しの中を歩くのも快適です。
サンチャゴで「気になる木」の代表格は、なんといってもアラウカリア・アラウカーナ(Araucaria araucana)という舌をかみそうな名前の木です(写真1)。
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写真1:流線型がきれいなアラウカリア・アラウカーナの木とその実ピニョン。 |
木の輪郭が弾丸のような滑らかな形をしており、どうしてあのような流線型になれるのかとても不思議です。木の高さ80mを超えるものがあり、幹はかつては帆船のマストにも使われていました。チリ南部では枝振りが異なり、高い木でも枝葉が木の頂上付近のみで、綺麗な流線型ではなくなります。こちらの樹形のほうが何故か有名で、絵本やTシャツによく使われています。
アラウカリア・アラウカーナの名前は、チリ中部およびアルゼンチン南西部に居住していたアラウコ・インディアン(Arauco Indian)に由来します。この木の実(ピニョン)は彼らの重要な食料源であったようです。秋にはスーパーの食料品売り場でピニョンを売っていましたので、さっそく買ってみました。皮が硬く、茹でて食べた感じは、栗のようでもあり、松の実のようでもあり、さっぱりとした味です。英語名では、葉がトゲトゲしていて猿が登れない(?)ためか、モンキー・パズルと呼ばれています。
サンチャゴ市内の歩道や公園を歩くと、アラウカリア・アラウカーナのように高くはありませんが、オンブー(Ombu)という名前で、根が巨大な木を見かけます(写真2)。狭い歩道では、根のために歩くスペースがなくなってしまうほどで、この「すごい根」の前に立つと、何度見ても圧倒されます。象やサイなどの大きな動物が寝そべっているように見えるので、よく子供たちが遊び場にしています。
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写真2:歩道も塞いでしまうオンブーの木の「すごい根」。 |
8月に入ってからは、桜や梅のような花が満開となっており、朝晩はまだ寒いですが昼間はもう春のような陽気です。梅のような木の花はすこし小振りでピンク色に近いので、遠めには富士桜のように見えます。また、桃のような木では、八重の花が満開で、青空をバックにするととても綺麗です。そのほか、桜にそっくりな花が咲いている木があります(写真3)。これは、実はアーモンドの木で、この並木道はまさに日本の桜並木のような感じです。近寄って枝をよくみると、アーモンドの種の殻が残っており、桜と違うことがよく分かります。アーモンドが桜のような花を咲かせる木だとは知りませんでした。