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ishiguromasato
現国立天文台名誉教授
執筆時 合同アルマ事務所 JAO (Joint ALMA Office)国際職員
元アルマ推進室室長
石黒 正人


アルマ建設現場の風景 その1
(2008.6)
アルマオフィス付近の風景
(2008.7)
アルマ建設現場の風景 その2
(2008.8)
サンチャゴの木と花たち その1
(2008.9)
サンチャゴの木と花たち その2
(2008.10)
アタカマの雲たち
(2008.11)
サンチャゴ犬も歩けば・・・
(2008.12)
アルマ建設現場の風景 その3
(2009.1)
アタカマ砂漠の思い出
(2009.2)
チリ、北から南へ
(2009.3)



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サンチャゴの木と花たち その1

 今回は、話題ががらりと変わりますが、サンチャゴの珍しい木や花たちをご紹介します。サンチャゴの街を歩くと、背の高いヒマラヤ杉やとても幹の太い椰子の木が目につきます。夏場は雨がほとんど降らないのに、このような巨木やそのほかの街路樹がよく育っています。これは、アンデスの雪解け水が豊富なのと、市民が水遣りに熱心なためではないかと想像しています。サンチャゴでは日差しがとても強いのですが、多くの通りに葉が茂った街路樹があるため、暑い日差しの中を歩くのも快適です。
 サンチャゴで「気になる木」の代表格は、なんといってもアラウカリア・アラウカーナ(Araucaria araucana)という舌をかみそうな名前の木です(写真1)。

アラウカリア・アラウカーナの木とその実ピニョン
写真1:流線型がきれいなアラウカリア・アラウカーナの木とその実ピニョン。

 木の輪郭が弾丸のような滑らかな形をしており、どうしてあのような流線型になれるのかとても不思議です。木の高さ80mを超えるものがあり、幹はかつては帆船のマストにも使われていました。チリ南部では枝振りが異なり、高い木でも枝葉が木の頂上付近のみで、綺麗な流線型ではなくなります。こちらの樹形のほうが何故か有名で、絵本やTシャツによく使われています。
 アラウカリア・アラウカーナの名前は、チリ中部およびアルゼンチン南西部に居住していたアラウコ・インディアン(Arauco Indian)に由来します。この木の実(ピニョン)は彼らの重要な食料源であったようです。秋にはスーパーの食料品売り場でピニョンを売っていましたので、さっそく買ってみました。皮が硬く、茹でて食べた感じは、栗のようでもあり、松の実のようでもあり、さっぱりとした味です。英語名では、葉がトゲトゲしていて猿が登れない(?)ためか、モンキー・パズルと呼ばれています。
 サンチャゴ市内の歩道や公園を歩くと、アラウカリア・アラウカーナのように高くはありませんが、オンブー(Ombu)という名前で、根が巨大な木を見かけます(写真2)。狭い歩道では、根のために歩くスペースがなくなってしまうほどで、この「すごい根」の前に立つと、何度見ても圧倒されます。象やサイなどの大きな動物が寝そべっているように見えるので、よく子供たちが遊び場にしています。

オンブーの木
写真2:歩道も塞いでしまうオンブーの木の「すごい根」。

 8月に入ってからは、桜や梅のような花が満開となっており、朝晩はまだ寒いですが昼間はもう春のような陽気です。梅のような木の花はすこし小振りでピンク色に近いので、遠めには富士桜のように見えます。また、桃のような木では、八重の花が満開で、青空をバックにするととても綺麗です。そのほか、桜にそっくりな花が咲いている木があります(写真3)。これは、実はアーモンドの木で、この並木道はまさに日本の桜並木のような感じです。近寄って枝をよくみると、アーモンドの種の殻が残っており、桜と違うことがよく分かります。アーモンドが桜のような花を咲かせる木だとは知りませんでした。

アーモンドの木
写真3:桜のような花が咲くアーモンドの木。
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