泉拓磨氏、令和6年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞をアルマ望遠鏡の研究で受賞

国立天文台でアルマ望遠鏡の運用にも携わる泉拓磨准教授が、令和6年度科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞を受賞しました。受賞に至った業績の題目は 「活動銀河核周辺物質の多彩な構造に関する観測的研究」です。

TIzumi

令和6年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞を受賞した泉拓磨氏
Credit: 国立天文台、自然科学研究機構

泉拓磨氏は、アルマ望遠鏡を用いて、成長中の超巨大ブラックホールである活動銀河核の研究を行なってきました。銀河中心の百光年以内の領域は超巨大ブラックホールの成長プロセスや、銀河と超巨大ブラックホールの共進化の起源解明に向けた重要な観測対象です。しかし、その小ささと、様々なタイプの物質が混在する複雑さから、この領域の星間物質の詳細な性質は未解明でした。泉氏は、活動銀河核に対し、そのX線放射が駆動する星間化学的影響も考慮した星間物質の高解像度観測を数多く実施することで、ブラックホールごく近傍では分子・原子・プラズマの各相のガスがそれぞれ異なる運動をして、特異な化学状態をとりつつ、降着流や噴出流等を生じているという、多相的かつダイナミックな様子を観測的に初めて明らかにしました。氏の一連の研究成果は、活動的なブラックホール周辺には地球や我々の銀河にはない、豊かでダイナミックな物質世界が存在することを示しており、人類の物質観を拡げるものであると期待されます。

泉氏は今回の受賞にあたり、以下のようにコメントしています。「このような素晴らしい賞を頂き、大変嬉しく思います。素晴らしい共同研究者の皆様、学生時代の指導教官、アルマ望遠鏡を生み出した先人の皆様、そして現在アルマ望遠鏡の運用に携わる皆様をはじめ、これまでご指導ご鞭撻頂いた全ての方々のおかげだと思っています。この場をお借りして感謝申し上げます。大学院生の頃に超巨大ブラックホール研究を始めて10年以上が経ちますが、この間、アルマ望遠鏡の高い解像度と感度を駆使して、銀河スケールからだんだんとブラックホール近傍へと研究を進めてきました。最新成果では、これまで全く観測されていなかった超巨大ブラックホールごく近傍の物質構造について、理論研究も組み合わせることで、ついにそのダイナミックな姿を捉え、物理的・化学的な解釈を得ることにも成功しました。とてもワクワクする成果を得たと同時に、研究において一つのマイルストーンを達成するには長い時間がかかる、それだけの努力が必要なのだと実感しました。今後も初心を忘れず、共同研究者の皆さんとコツコツと努力を重ね、さらに面白い成果を出して天文学の発展に貢献したいと思います。」

参考:
・2023年11月3日発表のプレスリリース「ついに解明!超巨大ブラックホールの成長メカニズムと銀河中心の物質循環」

なお、アルマ望遠鏡関連ではこれまでに文部科学大臣表彰を4度受賞しています。(肩書はすべて当時のもの)

平成23年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)
受賞者名:鵜澤佳徳(国立天文台 准教授)、藤井泰範(国立天文台 技術員)、王鎮(情報通信研究機構 グループリーダー)
受賞業績:窒化ニオブ系超伝導体によるテラヘルツ検出技術の先駆的研究

平成25年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門)
受賞者名:石黒正人(国立天文台 名誉教授)、長谷川哲夫(国立天文台 教授)、井口聖(国立天文台 教授)
受賞業績:高精度天体画像観測を可能にする開口合成型電波望遠鏡の研究

平成28年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門)
受賞者名:齋藤正雄(国立天文台 准教授)、水野範和(国立天文台 准教授)、川口昇(三菱電機株式会社通信機製作所 主管技師長)、大島丈治(三菱電機株式会社通信機製作所 プロジェクト部長)、井口聖(国立天文台教授)
受賞業績:超高精度サブミリ波望遠鏡ALMAアンテナの開発

令和3年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 若手科学者賞
受賞者名:小嶋崇文(国立天文台先端技術センター 准教授)
受賞業績:電波天文用受信機の高感度化および広帯域化に関する研究
受賞者名:橋本拓也(筑波大学数理物質系 助教)
受賞業績:電離酸素の輝線を用いた様々な最遠方銀河の観測的研究

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