アルマ人 新しい宇宙の姿を求めて

30年間の運用に堪える
立派なアンテナを作る。

直井 隆浩 NAOI Takahiro
国立天文台 チリ観測所専門研究職員。

Q1 アルマの仕事について教えてください。

ACAアンテナの受け入れ評価が主な仕事です。国立天文台が三菱電機製作のアンテナを受け入れる際に、仕様書に求められている駆動性能を満たし科学的成果を発揮できることを検証するため試験を実施し、データを解析して纏め、発表します。加えて、合同アルマオフィスのリクエストに沿ってACAアンテナへの作業をコーディネートするのも重要な仕事で、現場作業を総括しています。

今は、あるACAアンテナ一台の指向性能の検証試験をしているところです。殆どの試験は終了していますが最後に、ポインティングモデルの長期安定性検証が残っています。全てのアンテナには指向性能向上のため、アンテナとその設置位置の個体差を考慮したパラメータが設けられています。一般に再現性誤差と呼ばれるもののひとつです。例えば二週間後に同じパラメータで同じ測定を実施した場合、過去と同じ駆動性能が得られるかどうか、その検証をしています。

私の仕事は、アルマの科学的要求からアンテナの仕様性能を定義する、つまり技術要求を導き出すことから始まりました。三菱電機が受注し製作したアンテナの納品を受ける際に、その仕様が満たされているか検証する必要が生じます。検証の方法を検討し、各装置要求を導き出します。装置要求を実現させるためメーカーなどとの議論も不可欠です。必要に応じて、品質、安全や保守性といったアルマのシステム要求に沿って、インターフェイスを作成する場合もしばしばあります。ここまでが下準備となります。現在は山麓施設において実際の検証試験を実施しています。こうして国立天文台が受け入れたアンテナを、合同アルマオフィスへ示します。メーカーとアルマの間に立ってアンテナの性能を引き出す作業だと考えています。アンテナを製作する三菱電機もメーカーとして技術的にフルオープンというわけにはいきませんから、基本機能と構造を理解して性能を引き出すのは容易ではありません。お互いに協力しながら性能を煮詰めていく。スケジュールに関しても、三菱電機や合同アルマオフィスと調整して作業をコーディネートし、現場作業を実質的に操作しながらアンテナを三菱電機から納品され、合同アルマオフィスへ引き渡す、という管理と長期プランが求められます。

Q2 アルマで苦労したことを教えてください。

私は赤外測光観測で学位を取得し、減光を専門に研究していましたから、アンテナの性能評価というのはチャレンジングな分野でした。三菱電機のエンジニアからアンテナの基礎的な技術講義を受けるなどまでして理解を進めるのには忍耐が必要でした。またアルマは巨大な国際プロジェクトですから、みんながそれぞれやりたいことをやってしまいがちです(笑)。さまざまなバックグラウンドを持つそれぞれの人々を尊重し、意見を纏め、協調性を発揮しながら成果を導くことは、苦労でもありながら遣り甲斐のあることでした。残念ながら、サイエンティストとしての評価には結び付きませんが(笑)。また現場作業が中心となると、肉体作業が中心となることも大変でした。ハーネスを装着し、高所作業車を操ってアンテナへアクセスしたり、測定装置の設置や部品交換のために主鏡内を這い回ったりと、貴重な経験(笑)もさせてもらっています。

山麓施設の作業としては、いつも人が足りないということもあって、ここ何年間は常に忙殺されています。身体の具合が悪くなったりすると、こういうところですからなかなか治らない。まあ、とにかく現場ですからあらゆることが起きます。夜間、部屋で休んでいても、測定に問題があると電話で起こされて、対応を迫られることは少なくありません。入ったばかりのスタッフもいますので、ある程度の期間はがんばるしかありません。

Q3 アルマの今後に期待することを教えてください。

やはり、一日でも早く本格的な科学運用に入って、成果がどんどん出てほしいですね。ですから、出来るだけスムーズに高性能のアンテナを確実に仕上げて行きたいと考えています。運用面では、アルマの保守チームが自分たちの技術を磨いて、自分たちだけで運用できる仕組みにレベルアップして欲しいです。マニュアルを整備して彼らを教育するのも私の仕事だと考えています。そうして、同じようなアンテナを日米欧で作っているわけですから、やっぱり「日本のアンテナは、保守、運用、それに性能においてもイチバンいいね」と言ってもらいたい(笑)。現地で作業していると、日米欧のアンテナそれぞれに特徴があって、得手不得手がよく見えます。いい意味で、アンテナ作りを競い合うことによってブラッシュアップし、アルマの性能がより高まることを期待しています。

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