アルマ人 新しい宇宙の姿を求めて

世界の天文学者から
大きな期待を実感しています。

ラース・オケ・ニーマン Lars-Åke Nyman
国際アルマ観測所サイエンスオペレーション部長。欧州がこれまでにチリに建設した2つの電波望遠鏡SEST、APEXの責任者を歴任した。またアルマ望遠鏡の前身(欧州が構想)LSAの建設候補地調査にも関わった。
アルマ望遠鏡の初期科学観測には、世界中から900件もの観測提案(プロポーザル)がなされ、新型望遠鏡の最初の提案数としては異例の多さを記録。サイエンスオペレーション部長のラース・オケ・ニーマンさんに、その背景を聞きました。(インタビュアー/長谷川哲夫)

Q1 世界の研究者からアルマ望遠鏡に寄せられる期待についてどう感じていますか?

最初の初期科学観測に対しては、世界中からとてもたくさんの観測提案が提出されました。その数は900件で、競争率は9倍くらいになっています。アルマ望遠鏡がこれほど多くの研究者の関心を集めているということはとてもありがたいことです。この観測提案は50名の審査員によって審査され、点数表にまとめられています。順位がきまったら、次は採択された観測提案にもとづいて望遠鏡を動かすためのスケジューリングブロックを作る作業が待っています。世界の天文学者からの大きな期待を実感しています。

Q2 APEX*やSEST望遠鏡*を運用した経験に照らして、アルマ望遠鏡は何が違いますか?

一番大きな違いは、たくさんの研究者がアルマ望遠鏡のために長い間かけて準備をしてきた、ということでしょうか。多くの研究者がアルマ望遠鏡を使いたがっていて、ワークショップや研究会もたくさん行われてきました。先ほど言った通りたくさんの観測提案が提出されたわけですが、これを見ても多くの研究者がアルマ望遠鏡を使った研究のためにしっかりと時間をかけて準備してきたことがわかります。例えばAPEXでは、最初からこんなにたくさんの観測提案なんて届きませんでした。時間が経つにつれて観測提案は増えてきたとはいえ、一番最初の観測シーズンに向けてこんなに多くの研究者が議論を重ね周到な準備をしたというのはアルマ望遠鏡がダントツでしょうね。

Q3 観測提案は4ジャンルに分けられていますが、どれが人気がありますか?

はい、観測提案には4つのカテゴリーがあります。「宇宙論」「銀河」「星間物質と星形成・惑星形成」、それから4つ目が「恒星や太陽系」です。どのカテゴリーもとても人気があります。太陽系の観測についてもずいぶん提案が出ています。

太陽系ですか。サイクルゼロはまだ始まりに過ぎないんですよね。最終的には感度や解像度が100倍になる。こうなると、アルマで観測すればなんでも新発見が出てくるでしょうね。(長谷川)

そうですね、アンテナが全部そろえば、そうなるでしょう。

Q4 個人的には、アルマでどんな観測をしたいですか?

死にゆく星、AGB(漸近赤色巨星分枝)星、惑星状星雲ですかね。星形成や天の川銀河の構造にも興味があります。

Q5 最後に、日本の科学者に向けて何かメッセージはありますか?

チリ・ラシーヤ観測所の60cm電波望遠鏡の観測で研究協力したこともあるラースさんと長谷川さん。

ぜひいい観測提案をたくさん出し続けてください。

  • APEX ESOとオンサラ天文台、マックスプランク電波天文学研究所が運用する直径12mサブミリ波望遠鏡。アルマ観測所山頂施設のすぐ隣にある。
  • SEST ESOとオンサラ天文台が共同してESOラ・シーヤ天文台に建設した直径15m電波望遠鏡。1987年から2003年まで運用が行われ、南半球におけるミリ波天文学を牽引した。

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