三日月とリングは惑星誕生のサイン

アルマ望遠鏡が、若い星オリオン座V1247星のまわりの塵(ちり)の環の姿を写し出しました。この画像では、2種類の環があるように見えます。内側の環は星をぐるりと取り巻くくっきりとした環ですが、外側の環は三日月形をした淡いものです。

v1247-Ori-2017

アルマ望遠鏡が撮影したオリオン座V1247星。星を取り囲む塵の環と三日月型の構造がはっきりと写し出されています。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/S. Kraus (University of Exeter, UK)

ふたつの環のあいだの暗く見えていているところには、塵が少なくなっています。この隙間は、この場所に惑星ができている可能性を示しています。惑星ができると、その重力によって軌道の両側に圧力の高い部分が現れると考えられています。このため、まるで船のへさきが水を切って進むように、惑星の軌道に沿って隙間ができるのです。このとき塵が両側に掃き寄せられますが、その状態は数百万年にわたって続きます。すると、塵が密集した状態が保たれることによって、塵が合体成長しやすくなると考えられます。こうした現象を、ダストトラップと呼びます。

アルマ望遠鏡ではこれまでも若い星のまわりでダストトラップらしきものを発見してきましたが [1] 、アルマ望遠鏡の観測開始当初に比べて現在の解像度はずっと向上しています。その結果、地球から約1000光年離れたオリオン座V1247星のまわりで、三日月形に見えるダストトラップをはっきりととらえることができたのです。画像をよく見ると、内側の環もその明るさは均一ではなく、画像左下がやや明るくなっています。つまり、ここにもまわりより塵がたくさん集められているのです。研究チームは、この環の左下の部分もダストトラップではないかと考えています。こうした構造は、塵の環のなかで惑星が作られていくようすを計算したコンピュータシミュレーションとよく一致しています。

惑星形成の研究において大きな問題となっているのは、小さな塵が中心星に落下することなくどのようにして合体成長して惑星になるのか、という基本的とも思える謎です。ダストトラップが実際に発生しているのであれば、圧力によって塵は円盤内の特定の場所に掃き集められるので、星に落下することなく成長することができます。

研究チームの一員である名古屋大学の深川美里准教授は、「三日月があるに違いないと思い、この天体に狙いを定めましたが、リングまで出てくるとは予想していませんでした。遠い星の円盤でありながら、これまでで最も鮮明なダストトラップの画像が得られ、シミュレーションとの比較が格段にやりやすくなったと感じます。長年の謎である塵から惑星への成長過程が、近い将来、明らかになると期待しています。」と語っています。

論文・研究チーム
この研究成果は、Kraus et al. “Dust-trapping Vortices and a Potentially Planet-triggered Spiral Wake in the Pre-transitional Disk of V1247 Orionis” として、2017年10月10日発行の米国の天体物理学専門誌『アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ』に掲載されました。

この研究を行った研究チームのメンバーは、以下の通りです。
Stefan Kraus (University of Exeter), Alexander Kreplin (University of Exeter), 深川美里(名古屋大学), 武藤恭之(工学院大学), Michael L. Sitko (University of Cincinnati), Alison K. Young (University of Exeter), Matthew R. Bate (University of Exeter), Carol Grady (Eureka Scientific), Tim T. Harries (University of Exeter), John D. Monnier (University of Michigan), Matthew Willson (University of Exeter), John Wisniewski (University of Oklahoma)


 
1 2013年には Oph-IRS 48のまわりで、2016年にはHD135344Bのまわりで、それぞれ分布の偏った塵円盤が撮影されており、これらはダストトラップの存在を示唆するものと考えられます。

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