2019年11月12日~13日に、アルマ望遠鏡バンド1量産審査会が台湾で開催されました。
バンド1受信機は、アルマ望遠鏡が観測する電波の中で最も低い周波数(35~50 GHz [1] 、波長 6~8.5mm)を観測する受信機で、台湾中央研究院天文及天文物理研究所(ASIAA)を中心に国立天文台およびカナダ・ヘルツベルグ天体物理学研究所、アメリカ国立電波天文台、チリ大学が協力して開発が進められています。バンド1受信機がカバーする周波数帯ではさまざまな天文学研究が展開されることが期待されています。特に、星が誕生する領域での磁場の測定や惑星誕生現場で塵が成長していく過程の観測、さらに、地球から110億光年ほどの距離にある銀河に含まれる一酸化炭素分子の観測など、アルマ望遠鏡による研究の幅をさらに広げるテーマが提案されています。東アジア・アルマの枠組みにおける技術開発によって、アルマ望遠鏡の性能がさらに向上するのです。
審査会では、全66台のアンテナに搭載するものに予備を加えた合計73台の受信機を量産するうえで、必要な性能試験や組み立ての設備と手順、品質管理体制が十分なものであるかどうかが審査され、国際的な審査委員会によって量産の準備が整っていることが確認されました。今後量産が進むとともに、2020年前半にアンテナに搭載され、初めての電波の受信に挑みます。すべてのバンド1受信機の製造とチリへの輸送、アンテナへの組み込みは、2022年末までに完了する予定です。
ASIAAのパトリック・コック バンド1受信機プロジェクト主任研究者は、「量産審査会を通過したことは、バンド1開発チームにとっても、長年の協力関係にあるASIAAと国立天文台にとっても、大きなマイルストーンです。数年間にわたるチームの努力の結果として、全受信機の製造がアルマによって今回正式に認められました。」と語っています。
また、ASIAAでバンド1受信機プロジェクト・マネージャを務めるテッド・ホン氏は、「一つの受信機を開発するのとは違い、アルマ望遠鏡向けに73台の高性能受信機を製造するには、受信機全体に対する優れた品質保証体制や専用の評価体制が必要になります。台湾におけるチームワークのおかげで、今回のマイルストーンを達成することができました。また、ASIAAと日本の国立天文台との協力によって成し遂げられた、新たな成果でもあります。」とコメントしています。
1 | 最高周波数は、最善努力で52 GHzまでカバーする計画です。 |
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