銀河の中心にある超巨大ブラックホールは、時に周りから落ちるガスを飲み込んで成長し、その際にガスの重力エネルギーが開放されて光で明るく輝きます。この状態を活動銀河核といいますが、この活動銀河核がいつ終焉を迎えるかは長らくわかっておらず、その終焉の瞬間は長らく観測されてきませんでした。
東北大学学際科学フロンティア研究所の市川幸平助教らは、Arp 187という天体に着目し、活動銀河核が作るおよそ3000光年にもおよぶ電離領域を「鏡」として利用することで、3000年ほど遅れて地球に届いた過去の活動銀河核の光度を見積もりました。さらにNASAのNuSTAR衛星によるX線観測から得られた現在の光度との比較を行いました。その結果、活動銀河核の光度が、この3000年程度で1000分の1以下に暗くなったことが明らかになり、活動銀河核が死につつある瞬間を捉えることに成功しました。
この研究では、アルマ望遠鏡と米国の電波干渉計VLAの観測結果をもとに、Arp 187の活動銀河核から噴き出すガスの広がりを測定しました。また、アルマ望遠鏡による観測でArp 187中心核からの電波が検出されなかったことも、活動銀河核の活動が非常に弱まっていることを示す根拠となりました。
本研究成果は2021月6月の米国天文学会年会で発表され、6月7日(米国東部夏時間)には米国天文学会主催の記者会見が開かれました。
詳しくは、東北大学のプレスリリース「最期を迎えた超巨大ブラックホールの発見 3000光年寄り道した光が捉える超巨大ブラックホールの最期の輝き」をご覧ください。