日本製バンド10受信機による初スペクトルの取得に成功

チリ時間の11月10日、標高2900mのアルマ山麓施設にて行われた観測試験の中で、国立天文台製バンド10受信機によって天体からの電波を受信し、スペクトルを取得することに初めて成功しました。
今回の試験観測で観測対象となったのは、いて座にある電波源いて座B2(Sgr B2)です。いて座B2は私たちが住む銀河系の中心部近くに位置しており、強い電波がでていることが知られています。グラフ中央に表れた山(ピーク)が、強い電波を示しています。

初受信を祝して、観測に参加したスタッフがスペクトルに寄せ書きをしました。

アルマの受信機は周波数帯によって10種類に分けられ、それぞれバンド1から10と名付けられています。日本はバンド4、8、10の3種類の受信機の開発・製造を担当しています。787から950ギガヘルツの周波数帯のバンド10受信機は、10種類の受信機の中でも最も開発が難しいとされてきましたが、国立天文台が2009年に開発に成功しました。
電波の中でもサブミリ波は水蒸気による吸収が激しく、今までは本格的な観測は行われていませんでした。標高5000mという高地にあるアルマ望遠鏡のバンド10受信機によって、約900GHzという極めて高い周波数での天文学の扉が開かれることになります。

バンド10受信機は2012年6月に量産審査会に無事合格し、現在は量産体制に入っています。バンド10受信機の開発を行ってきた鵜澤佳徳チームリーダー(国立天文台先端技術センター)は、今回の知らせを受けて次のようにコメントしています。「『Band 10受信機なんて本当に実現できるのか?』と思いつつ開発を開始した7年前を思い出し、感動に浸っています。欧米も含めたALMA全体でBand 10受信機開発をサポートしていただいたお蔭です。全アンテナへの搭載に向けて、チーム一丸となって量産を進めます。」

すでに日本製の3種類の受信機、すべてで天体からの電波受信に成功したことになります。日本で製造された受信機によって観測をする日が一歩近づきました。

初スペクトル取得を記念した集合写真からも関係者の喜びが伝わってきます。右から5人目が浅山信一郎(国立天文台助教/合同アルマ観測所シニアRFエンジニア)です。

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