10月26日(チリ時間)、国立天文台が開発した2台のバンド10受信機を使った干渉計試験が実施され、木星の衛星カリストとオリオンKL天体からの電波の検出に成功しました。観測周波数はそれぞれ863 GHz、806 GHzであり、これほど高い周波数での干渉計試験に成功したのは史上初めてのことです。
図. オリオンKL スペクトルと位相
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)
図の高解像度版 (PNG/ 116KB)
図は、今回の試験観測で得られたオリオンKL天体にある一酸化炭素分子が放つ電波のスペクトル(上)と位相(下)です。オリオンKL天体は内部で非常に活発な星形成が進んでいることが知られていて、複雑な形状のスペクトルからはガスの運動が激しいことがわかります。また位相情報からは、KL天体から噴き出すガスを捉えた可能性が読み取れます。
今回の試験観測では、アルマ望遠鏡山頂施設(標高5000m)に設置された日本製7mアンテナ2台に、それぞれバンド10受信機を搭載して行われ、その信号は日本が開発したACA相関器で処理されました。これほど高い周波数での干渉計試験に成功したことは、アタカマの観測条件の素晴らしさ(水蒸気の少なさ)とアンテナの鏡面精度、バンド10受信機の性能を含めた望遠鏡システム全体がきちんと機能していることを示すものです。
アルマ望遠鏡では観測する周波数を10の周波数帯に分け、それぞれに対応した受信機を開発してアンテナに搭載しています。バンド10受信機はこの中で最も高い周波数(787 GHz ~ 950 GHz)の電波を観測する、非常に重要な受信機です。その周波数の高さから、他の周波数帯の受信機で使用している超伝導素材では仕様を満たせないなどの困難な課題がありましたが、国立天文台先端技術センターの受信機開発チームは新たに超伝導素材を開発するなどして、アルマ望遠鏡に必要な性能を満たす受信機を作り上げました。
下の写真は、山麓施設のコントロールルームで撮影されたスタッフたちの記念写真です。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), T. Sawada (NAOJ/ALMA)