チリを縦断するアルマ望遠鏡とのふれあいの輪

アルマ望遠鏡では、立地するチリの各地で成果を紹介する展示や天体観望会を企画しています。現地運用を担う国際組織「合同アルマ観測所」が主導する形で行われているこれらのイベントは、首都サンティアゴとその近郊はもちろんのこと、南北に細長いチリの南端ティエラ・デル・フエゴでも開催されました。そしてアルマ望遠鏡最寄りの町のひとつサンペドロ・デ・アタカマでは、日本の伝統行事「七夕」にちなみ、多くの人が短冊に願い事を書いて木に飾りました。

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サンペドロ・デ・アタカマで開催した七夕イベントで、願い事を書いた短冊を木につるす子ども。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

フエゴ島ポルベニールの生徒アレッテ・オルギンさんは「本当に素晴らしかったです。天文学者のように宇宙について教えてくれる専門の先生は、ここにはいないので。」とイベントの感想を述べています。アルマ望遠鏡は、チリの科学技術機関CONICYTが企画した”1000 Scientists, 1000 Classrooms”プログラムに参加し、2017年第2学期に12の学校で出張授業を行います。

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アルマ望遠鏡の天文学者ロレト・バルコス(左下)と広報担当ニコラス・リラ(中央)がサンティアゴ市マイプの学校で講演したときのようす。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

チリ南部の街プンタ・アレナスとポルベニールでは、アルマ望遠鏡の天文学者パウロ・コルテスが高校生向けの出張授業や教員向けの講演を行い、なぜチリに多くの天文台があるのか、その中でアルマがどんな働きをし、どんな成果を上げてきたのかを紹介しました。参加した高校生からは「天文学になじみのない若い人も多いので、こうしたアウトリーチ活動はとてもうれしいです。私たちの頭の上の世界で何が起きているのか、満月なのか三日月なのか、月がどんな影響を与えるのかということを、私たちは知りません。自分自身のことに気を取られ、まわりの世界を見ていなかったのです。」「講演はとてもすばらしかったです。すべてが新しく、普段触れている世界とは違うものでした。天文学にはずっとあこがれを持ってきましたが、今はなんだか手が届きそうに思います。」という感想をいただきました。

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アルマ望遠鏡の天文学者パウロ・コルテス(最前列)とティエラ・デル・フエゴの教員たち。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

チリ南部オソルノでは、巡回展示ExpoALMAが第6回科学技術フェアの一部として開催されました。地元大学と自治体の協力により参加無料で開催されたこの展示では、アルマ望遠鏡の建設過程やアルマ望遠鏡が撮影した天体画像を数多くの写真として掲示しました。また教員向けの電波天文学ワークショップも開催しました。

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チリ南部オソルノで行われた展示 ExpoALMA
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

アルマ望遠鏡の地元の町サンペドロ・デ・アタカマでは、日智友好120周年を記念して、国立天文台と合同アルマ観測所、サンペドロ・デ・アタカマ市の協力により七夕イベントを開催しました。サンペドロ・デ・アタカマ市役所のマリアナ・イェレス氏は、「こうしたイベントは市民の教育や娯楽にとって大変重要ですし、多くの人がひとつの場所に集まり真摯な願いを込めるということはとても意義深いことです。天文学が重要な意味を持つこの場所では、とくにそうです。多くの人が、素晴らしい空を求めてここにやってきますから。」と語っています。国立天文台チリ観測所の阪本成一所長は、「こんなに多くの子どもたちが夢や願いを短冊に書いてくれて、とても感動しています。アルマ望遠鏡のような巨大科学プロジェクトには、地元の皆さんの支援が欠かせません。今回のような伝統的なイベントが、多くの人と考えを共有し未来に向かって一緒に行動するきっかけになるといいと思います。」と述べています。

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サンペドロ・デ・アタカマ市役所前の広場に記入台を設置し、短冊に願い事を書いてもらいました。
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

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