原始星を取り巻く円盤から磁気的に噴き出す風を解明

アルマ望遠鏡を使用した国際研究チームは、若い原始星から噴き出す風が星周円盤で発生した磁気的な力によって駆動されている証拠を発見しました。この観測は、星形成の初期段階における磁気流体力学(MHD)円盤風の作用を初めて明確に示すものです。

恒星や惑星はガスと塵(ちり)の回転円盤から生まれてきますが、この円盤がどのようにして角運動量を失うのか、長らく議論されてきました。これは、物質が内側に落ち込んで星になるために重要なプロセスです。

ソウル国立大学のChul-Hwan Kim大学院生、 Jeong-Eun Lee教授がリードする国際研究チームは、アルマ望遠鏡の超高解像度観測によって非常に若い原始星を調査し、「磁気的に駆動された円盤風」が円盤の角運動量を抜き去っている明確な証拠を発見しました。

研究チームが注目したのは、約1300光年離れたオリオン座B分子雲に含まれる、まだガスに深く埋もれた形成途中の星(クラス0天体)HPOS 358です。この天体のように形成のごく初期の段階にある恒星は、まだ星周円盤から盛んに物質が降着している最中です。降着が進むためには、円盤は角運動量を捨てなければなりませんが、それがどのようにして起こるのかは、星形成研究に残る重大な問題の一つです。

チームは、原始星近傍のガスを追跡するため複数の分子種でガスの動きを観測しました。そのデータは、流出するガス(アウトフロー)が、円盤の回転と同じ方向に回転しているという重要な兆候を示しています。アウトフローが衝撃波やジェットとの相互作用によって引き起こされている場合は、円盤の回転方向がアウトフローの運動に残りません。観測された運動は、回転円盤から直接放出されたガスが円盤風となって流れ出していることを示しているのです。

さらに、アウトフローが多層的な構造を持つことも明らかになりました。異なる分子は、異なる領域の状態を反映しています。一酸化硫黄(SO)はアウトフローの中心軸付近に集中し、メタノール(CH3OH)は中間層、ホルムアルデヒド(H₂CO)は外側に広がった層を捉えています。このような層構造は、幅広い円盤半径から円盤風が吹きあがっていることを示唆する理論モデルとよく一致します。

最近では、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)も、若い恒星からの層状のアウトフローを撮影していますが、アウトフローが回転しているか、円盤本体と連動しているかを突き止めることはできません。精密に運動を測定できるアルマ望遠鏡の高い周波数分解能があってこそ、アウトフローの物理的発生源を特定する力学的証拠を得ることができたのです。

アウトフローの性質をさらに調べるため、研究チームは「磁気レバーアームパラメータ」と呼ばれる指標を分析しました。回転する円盤に固定された磁力線は、回転レバーや「ぱちんこ」のように作用して、ガスを加速して外側に弾き飛ばします。このパラメータは、磁場が円盤の角運動量を抜き出す効率を定量的に表すものと言えます。アウトフローの主因が磁場であれば、その値は1よりも大きくなるはずです。

果たして、HOPS 358で測定されたこのパラメータはおよそ2.3となり、磁場がガスを放出する場合の閾値を十分超えています。アウトフローがMHD円盤風によって駆動されていることの強い証拠を得たのです。

本研究では、将来的に惑星が形成されると考えられる円盤半径10~18天文単位の領域から円盤風が噴き出していることも示されました。このことは、惑星形成円盤の物理的、科学的環境を形作る最初期の段階から、円盤風が重要な役割を果たしていることも示唆します。

以上の結果は、原始星周囲の円盤から角運動量を抜き取り物質の降着を可能にしているのはMHD円盤風であり、それが星の成長や惑星形成の初期条件にまでかかわるような円盤進化に盛んに影響を及ぼしていることを物語っています。

Fig1

図1:アルマ望遠鏡により異なる分子が出す電波で観測された、生まれたばかりの恒星HPOS 358の周りのガス分布。一酸化炭素(¹³CO)は星の周囲の回転円盤を、メタノール(CH₃OH)、一酸化硫黄(SO)、ホルムアルデヒド(H₂CO)は円盤風として放出されたアウトフローの異なる層を捉えている。オレンジ色の実践は、先行研究に基づくHOPS 385のアウトフローの中心軸、灰色の等高線は塵が放つ電波連続波で示した星周円盤。私たちに近づく速度を青、遠ざかる速度を赤として、速度構造を表している。アウトフローと円盤が同じ方向に回転している。 (クレジット:Kim et al., ALMA (ESO/NAOJ/NRAO))

Fig2

図2:アルマ望遠鏡による観測から想定される原始星HOPS 384周囲の構造(模式図)。異なる分子で観測された、星周円盤と円盤から噴き出したガス風の層構造を表している。分子によって異なる空間分布が見られたことで、円盤風の構造と物理状態をうかがう重要な手掛かりが得られた。 (クレジット:Kim et al., ALMA (ESO/NAOJ/NRAO))

この研究成果は、Chul-Hwan Kim et al. “Direct evidence of magnetized disk winds driving rotating outflows in protostar HOPS 358” として Nature Communications 誌に2026年4月6 日付で掲載されました。
DOI:10.1038/s41467-026-71142-3

この研究は、東アジア各国の複数の研究助成を受けて行われました。
この論文に使用されたアルマ望遠鏡データ:ADS/-JAO.ALMA#2023.1.01245.S.

アルマ望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計、Atacama Large Millimeter/submillimeter Array: ALMA)は、欧州南天天文台(ESO)、米国国立科学財団(NSF)、日本の自然科学研究機構(NINS)がチリ共和国と協力して運用する国際的な天文観測施設です。アルマ望遠鏡の建設・運用費は、ESOと、NSFおよびその協力機関であるカナダ国家研究会議(NRC)および台湾国家科学及技術委員会(NSTC)、NINSおよびその協力機関である台湾中央研究院(AS)と韓国天文宇宙科学研究院(KASI)によって分担されます。 アルマ望遠鏡の建設と運用は、ESOがその構成国を代表して、米国北東部大学連合(AUI)が管理する米国国立電波天文台が北米を代表して、日本の国立天文台が東アジアを代表して実施します。合同アルマ観測所(JAO)は、アルマ望遠鏡の建設、試験観測、運用の統一的な執行および管理を行なうことを目的とします。

 

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