ALMA初期科学観測 サイクル0

合同ALMA観測所(JAO)は、初期科学観測(サイクル0)を2011年後半にベスト・エフォートの形で開始する予定であり、そのための観測プロジェクトの提案を2011年の第1四半期末に募集する予定である。初期科学観測の目的は、科学的に有意義な結果を天文コミュニティにもたらすこと、ALMA望遠鏡の能力の向上に応じたALMAの観測システムおよび装置の継続的性能評価を促進することである。初期科学観測の実施によって66台の完全なアンテナの建設が大幅に遅延することは許されないが、この最先端施設から最初の科学データを取得できる貴重な機会となることは間違いない。初期科学観測は、サイクル1でも続けられ、ALMA望遠鏡の建設完了まで行われる。

天文コミュニティに公開されるALMAの最初の試験データは、科学評価観測プログラムを通じて取得される。科学評価には、ALMAの観測システムを試験し、その性能を確認するための天体観測が含まれる予定である。ここで取得される最初のデータは初期科学観測サイクル0 の提案募集開始までに公開される予定である。

初期科学観測サイクル0 は、16台の12 mアンテナ、周波数バンド3、6、7、9 (波長はそれぞれおよそ3 mm、1.3 mm、0.8 mm、0.45 mm)の受信機、最大250 mのベースライン、単視野干渉計観測、 無理のない範囲で科学目標を達成できる限定された分光モードを用いて行われる予定である。ただし、提案募集時には、これより長いベースライン、モザイク副視野干渉計観測、偏光観測が追加として観測募集に含まれる可能性がある。

初期科学観測サイクル0の期間は9ヶ月間が予定され、全観測時間は500ないし700時間が予定されている。観測プロジェクトの提案募集には天文学者なら誰でも応募することができる。初期科学観測サイクル0の性能を最善に実証・利用し、比較的短時間の観測でも(平均2~3時間)科学的価値の高い結果を生み出すことのできるものが優先される。応募された提案は、天文分野の専門家による審査によって評価され、科学的な位置付けならびに提案募集で定義された科学性能の観点からの実現可能性をもとに厳格にランク付けされる。採用された観測プロジェクトは(サイクル0の期間内で完了しない場合であっても)、次のサイクル以降に持ち越されることはなく、ALMAデータポリシーによって定義されるデータ占有権のみが与えられる。また、ここで採用された観測プロジェクトのデータ権は、望遠鏡性能が向上した時に同種の観測を行うことを妨げるものではない。

初期科学観測サイクル0に採用された観測プロジェクトの提案者は、ALMAとリスクを共有することになる。ALMAのスタッフはデータの品質保証を行い、それぞれの地域のALMA地域センター(ARC)を通じて解析済みデータを提供する。しかしながら、観測プロジェクトの完了が保証されたり、データやデータ解析の品質やレベルがALMAの本格科学運用時の標準に合致することが保証されたりするわけではない。初期科学観測では、提案者に豊富な電波干渉(特にミリ波)の経験があれば、初期科学観測の取得データを扱う上で有利になると考えてよい。主研究者と観測チームは、取得データ解析に各自の時間と専門知識を投入する必要があることを認識し、また、そのために品質保証とデータ解析を支援するALMA地域センターを訪問しなくてはいけない可能性もあることを認識する必要がある。主研究者が経験不足の場合には、ALMA地域センターや合同ALMA観測所に勤務するスタッフが観測プロジェクトメンバーとして参加するようにアレンジできる。

ALMA観測提案審査委員会
ALMA観測案審査委員会は、テキサス大学のニール・エバンス教授を委員長とし、ALMAに対する提案のすべてをランク付けする責任を負う。エバンス教授は、ミリ波、サブミリ波、赤外線観測天文学における星形成や分子雲の分野での素晴らしい研究実績をもつ専門家として有名で、過去に米国学術研究会議の天文・天体物理学委員会委員、 米国国立電波天文台の計画諮問委員会委員長、ALMA科学諮問委員会の委員長を務めた経験がある。今回のALMA提案審査委員会委員長の任期は3年間であり、ALMA科学運用のサイクル0、1、2を担当することになる。

サイクル0の現行計画では下記のスケジュールを予定している。ただし、状況により変更になる場合がある。

  • 2011年3月31日: 初期科学観測サイクル0 観測プロジェクト提案募集 、オフライン形式の観測準備ソフトウエアのリリース
  • 2011年6月1日: 観測プロジェクト提案提出用アーカイブの公開
  • 2011年6月30日: 観測プロジェクト提案締切
  • 2011年9月中旬:観測プロジェクト提案者に対する提案審査結果通知の最終日
  • 2011年9月30日:ALMAサイクル0観測開始
  • 2012年2月: エンジニアリングのための観測停止 (1ヵ月間)
  • 2012年6月30日: 初期科学観測サイクル0終了



詳しくは、こちらをご覧下さい(英語のみ)合同アルマ観測所(JAO)のページ

NGC253
Credit : ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

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