「X線が検出された最遠の銀河団」の特定にアルマ望遠鏡が貢献

数多くの銀河の集合体を銀河団と呼び、重力で結びついた構造としてはこの宇宙の中で最も巨大な天体です。銀河団内には高温のプラズマガスが満ちており、強いX線を放ちます。

今回観測された銀河団はCL J1001+0220と名付けられたもので、ハッブル宇宙望遠鏡COSMOSプロジェクトで発見された天体です。発見当時は見かけ上銀河が集まっているように見えるだけで、互いに重力的に結びついた銀河団であるかどうかは不明でした。今回、アメリカ航空宇宙局NASAのX線観測衛星チャンドラと欧州宇宙機関ESAのX線観測衛星XMM-Newtonによる観測で、この銀河の集合を取り囲む巨大なX線放射が発見されました。またアルマ望遠鏡と米国立電波天文台の電波干渉計JVLA (Karl G. Jansky’s Very Large Array)、さらに欧州南天天文台の光学赤外線望遠鏡VLTなどによる観測からCL J1001+0220に含まれる銀河までの距離が測定され、これらの銀河がほぼ同じ距離に集まっていることが確認されました。これらの結果から、CL J1001+0220が、単に見かけ上多くの銀河が重なっているのではなく、実際に重力を及ぼしあう銀河が集まった銀河団であることが確認されたのです。

CL J1001+0220は、X線が検出されたものとしては最も遠くの銀河団となりました。この銀河団までの距離は、地球から112億光年(注)です。この発見によって、銀河団がこれまで考えられていたよりも7億年ほど昔から存在していたことが明らかになりました。これまで見ることのできなかった誕生直後の銀河団として、今後も注目を浴びそうです。

注:この天体の赤方偏移はz=2.506です。この値をもとに最新の宇宙論パラメータ(H0=67.3km/s/Mpc, Ωm=0.315, Λ=0.685: Planck 2013 Results)を用いて距離を計算すると112億光年となります。異なる宇宙論パラメータを採用している海外機関からのプレスリリースでは、111億光年という距離になっているものがあります。距離の計算について、詳しくは「遠い天体の距離について」もご覧ください。

この研究成果は、Wang et al. “Discovery of a galaxy cluster with a violently starbursting core at z=2.506″として、2016年8月発行の米国の天文学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に掲載されました。

下の画像は、今回発見された銀河団CL J1001+0220です。チャンドラが観測したX線を紫、欧州南天天文台UltraVISTAによる赤外線を赤・緑・青、アルマ望遠鏡が観測した一酸化炭素の電波を緑で合成しています。X線で見える高温ガスの中にある4つの白っぽい点が、アルマ望遠鏡で検出した銀河です。
Credits: X-ray: NASA/CXC/CEA/T. Wang et al; Infrared: ESO/UltraVISTA; Radio: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

Tags : 観測成果

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