日米欧がALMA協定書に署名完了

日本(自然科学研究機構)・北アメリカ(米国国立科学財団)・ヨーロッパ(ヨーロッパ南天天文台)は14日、「アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計 (ALMA)」と呼ばれる巨大電波望遠鏡を共同で建設する協定書への署名を完了した。署名は持ち回り方式で行われ、先ず8月25日にドイツのガーヒングで Catherine Cesarskyヨーロッパ南天天文台長が、次いで9月8日にワシントンD.C.でArden L. Bement米国国立科学財団長官代行が署名し、そして9月14日に東京で志村令郎自然科学研究機構長が署名することで協定が成立した。本協定書の署名完了により、日本の参加によってALMAをいっそう強力な観測装置にする道が開けた。

ALMAの完成予想図 Credit:ALMA(ESO/NAOJ/NRAO)

これまでの経緯

ALMAは3つの大型計画が統合されたものである。その母体となった日本の「大型ミリ波サブミリ波干渉計 (LMSA)」、アメリカの「ミリ波干渉計 (MMA)」、ヨーロッパの「大型南天干渉計 (LSA)」は、日本・北アメリカ・ヨーロッパにおいてそれぞれ最優先の天文学計画として位置づけられてきた。2001年4月には、日米欧の代表が東京で会談し、この3計画をALMA計画としてひとつに統合し、チリにおいて建設・運用する方向を目指す決議書に署名した。先んじて建設予算を獲得した米欧は 2002年から、直径12mのアンテナ64基や4種類の受信機群などからなる基本部分についての合同での建設に合意し、カナダとスペインもこの計画に加わることとなった。

国立天文台も正式参加に向けて2002年度から設計開発を行ってきたが、いよいよ今年度から自然科学研究機構国立天文台として建設予算を獲得し、その貢献内容の全体についての合意が得られた。日本が北米・ヨーロッパに次ぐ3番目のパートナーとして参加することとなり、チリもまたホスト国として参加しているため、この計画は基礎科学研究の分野でも数少ない真のグローバルな計画となったといえよう。

日本の貢献内容

日本 (自然科学研究機構 国立天文台) は、アタカマコンパクトアレイ(ACA)と呼ばれる直径12mのアンテナ4基と直径7mのアンテナ12基からなるアンテナ群と分光相関器、サブミリ波を中心とする3種類の受信機群などの装置を担当する。ACAシステムは銀河や原始惑星系円盤などの広がった構造を忠実に描き出すのに用いられ、ALMAで得られる天体画像の信頼性を大幅に向上する。追加される3種類の受信機群は、最高の周波数帯を含む新たな周波数帯での観測を可能にし、さまざまな星間分子の探査や、さまざまな赤方偏移の遠方天体の観測を可能にする。これらの装置は他の装置同様にALMA全体の中に組み込まれ、ALMAの性能を特にサブミリ波帯において飛躍的に向上させ、世界の研究者に新たな観測可能性を提供する。これにより、ALMAは銀河や惑星系の誕生や生命につながる宇宙における物質進化などの主要な研究分野においてさらに大きな役割を果たすであろう。

日本の研究者は、国立天文台を通じてなされるこれらの貢献により、日本の追加分だけでなくALMA全体を用いた観測機会を得ることになる。

今後のマイルストーン

今後は速やかに日本担当分の建設・開発を進め、2007年半ば頃から少数のアンテナを使用して部分的な運用を開始し、2012年に全面運用を開始することが予定されている。

補足

協定書本文

Agreement concerning the construction of the enhanced Atacama Large Millimeter/submillimeter Array (ALMA) between the European Organisations for Astronomical Research in the Southern Hemisphere and the National Science Foundation of the United States and the National Institutes of Natural Sciences of Japan (September 14, 2004)

参加国 (2004年9月21日現在):16か国

(内訳):
日本
北アメリカ:アメリカ、カナダ
ヨーロッパ:ESO加盟11か国 (イギリス、イタリア、オランダ、スイス、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、フィンランド、フランス、ベルギー、ポルトガル)、スペイン
チリ (ホスト国として用地や税制面などで便宜供与)

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