アルマ望遠鏡科学観測「サイクル7」の観測提案審査が完了

アルマ望遠鏡の新たな科学観測「サイクル7」が2019年10月1日から始まります。サイクル7では、直径12mのアンテナ群を使った観測時間として4,300時間が用意されています。アルマ望遠鏡の観測提案審査委員会は、2019年4月までに世界中から出された観測提案1,773件の審査を行い、約400件の提案が採択されました。

最終審査会は、2019年6月に米国アトランタで行われました。審査員として世界中から158名の天文学者が集まり、提出された観測提案に対して科学的な優先順位づけを行いました。また、50時間以上の観測が必要となる大規模な観測プロジェクトについても審査が行われました。

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米国アトランタに集まった観測提案審査委員会の面々。
Credit: E. Villard – ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

サイクル7では、世界中の研究者から1,773件の提案が出され、直径12mのアンテナ群に要求された合計観測時間は19,148時間にのぼりました。今回の観測提案の競争率は 4.5倍でした。

合同アルマ観測所は、この審査結果を受けて、優先順位づけされた提案の割り振りを行い、サイクル7の観測スケジュールを作成します。このスケジュールの作成にあたり、研究者の所属地域別に観測時間の調整を行ったり、標高5,000mにあるアンテナ群の配置状況や過去の気象条件を考慮したりする必要があります。

審査会で採択されたグレードA・Bの提案には、4,033時間の観測時間が割り当てられます。これに、サイクル6のグレードAプロジェクトを完了させるのに必要な267時間(繰越分)を合わせると、サイクル7で観測に提供される4,300時間になります。

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採択された観測例案の研究テーマ別割り当て(左図)、 観測提案の地域別割り当て時間比率(右図)
Credit: ALMA(ESO/NAOJ/NRAO)

観測提案の優先順位づけを行うため、審査会は5つの専門委員会に分かれ、それぞれ専門分野の審査員が研究テーマ別に評価を行います。研究テーマは、『観測的宇宙論・遠方宇宙』『銀河・銀河中心核』『星間物質・星形成・星間化学』『星周円盤・太陽系外惑星・太陽系』『恒星進化・太陽』の5つです。

サイクル7の大規模観測プロジェクトには、14件の提案が出されていました。審査の結果、次の4件が採択されました。これらの大規模観測プロジェクトに、280時間が割り当てられることになります。
「一酸化炭素(CO)追跡によるおとめ座銀河団の環境」北アメリカ、トビー・ブラウン氏
「天の川銀河における大質量原始星団の進化論的研究」ヨーロッパ、セルジオ・モリナリ氏
「ガス雲に埋もれた円盤における初期惑星形成」東アジア、大橋永芳氏(国立天文台)
「宇宙再電離期で最も明るい [CII] + [OIII] 銀河の探索」ヨーロッパ、リチャード・ボーエンス氏

サイクル7では、VLBI(Very Long Baseline Interferometry:超長基線電波干渉法)による観測提案が17件ありました。VLBIとは、遠く離れた場所にある電波望遠鏡をつないでひとつの仮想的な望遠鏡とする技術で、2019年4月に発表されたブラックホール初撮影でも使用されました。この17件のうち、波長の長い電波を観測する「Global mm-VLBI Array(GMVA)」は8件、波長の短い電波を観測する「Event Horizon Telescope(EHT)」は9件の提案がありました。審査の結果、GMVAの2件とEHTの4件が採択されました。

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