新型コロナウイルスが世界的に猛威を振るう中、アルマ望遠鏡のスタッフは望遠鏡の再起動と科学観測の再開を目指して努力を続けてきました。現在、アルマ望遠鏡のアンテナ群への電源の再投入と機能確認が1台ずつ進められています。現時点で、一部のアンテナを用いたデータ取得からデータ処理までの一連の確認が成功裏に完了しています。
アルマ望遠鏡による観測再開のためには、安全上の制限や技術的制約を評価する必要があります。2020年3月に新型コロナウイルスの世界的流行を受けて望遠鏡運用を停止してから間もなく1年となりますが、2021年3月中に科学観測を再開できる見込みです。
合同アルマ観測所長のショーン・ドゥアティ氏は「この1年は誰にとっても大変厳しいものになりました。職員の安全を守るために、私たちは昨年アルマ望遠鏡の運用を停止させる決断を下しました。しかしこの状況下でも職員や協力関係にある多くの方々が、在宅や交代勤務で、観測所を健全に維持するために素晴らしい働きをしてくれました。リスクの軽減とすべての職員・関係者の安全を最優先に考えた復帰計画に基づいて作業を行い、科学観測の再開が間近に迫ってきたことを、とてもうれしく思います。」とコメントしています。
科学観測は、全66台のアンテナのうち少なくとも40台を使った限定的な運用から再開する予定です。科学観測サイクル7で採択された観測プロジェクトのうち、利用可能なアンテナ群で実行できる観測プロジェクトから順次観測が進められます。サイクル7で本来想定されていたものより少ないアンテナ数での観測再開となるため、望遠鏡全体の感度もやや低い状態での観測となります。このため、個々の観測プロジェクトで求められている感度を達成するには、当初の想定より長い時間が必要となる見込みです。限定的な科学観測の中では、今後の観測サイクルのための試験観測も行われる予定です。
科学観測の再開と並行して今後も引き続きアンテナ群の復旧作業を続け、通常の科学観測への復帰を目指します。限定的な科学観測を含めたすべての業務は、アルマ望遠鏡スタッフの健康と安全を第一に考え、ウイルスがもたらすリスクを管理するための様々な安全規則に基づいて行われます。