この研究成果は、2024年10月7日に欧州南天天文台(ESO)他からプレスリリースされたものです。詳しくは、ESOのプレスリリース(英語)(https://www.eso.org/public/news/eso2415/)をご覧ください。
稲⾒華恵助教(広島大学)、Hiddo Algera研究員(国立天文台/広島大学)らが参加する国際共同研究チームは、アルマ望遠鏡を使って、最も遠い、天の川銀河に非常に良く似た⼤きな回転円盤銀河を発⾒することに成功しました。
現在の銀河の形成と進化に関する理解では、初期宇宙の若い銀河は、激しく衝突合体を繰り返すことでだんだんと成⻑するため、現在の銀河に⽐べて、より⼩さく、より複雑な形と運動をしていると予想されていました。今回、131億年前の宇宙(7億歳の宇宙)で⾒つかった、REBELS-25と呼ばれる若い銀河は、成⻑し切った銀河である天の川銀河に匹敵するくらいの⼤きさを持つ回転円盤銀河でした。
稲⾒助教は今回の発⾒について「宇宙誕⽣のすぐあとに、回転する円盤をもつ銀河が存在したとは驚きです。銀河がどのように形作られるのかについて、これまで理解を覆す可能性のあるエキサイティングな発⾒です」とその意義を語りました。
REBELS-25は宇宙が誕⽣してまだ7億年しか経っていない頃の銀河で、回転円盤を持つ銀河は存在しないと考えられていました。現在の理論では、複雑な形をもつ⼩さな銀河が、互いにぶつかって何⼗億年もの時間をかけてスムーズな回転円盤をもつよう進化していくはずなのですが、今回の発⾒はこの銀河成⻑のタイムスケールに疑問を投げかけるものです。そのため、私たちの天の川銀河とよく似た、回転円盤を持つ銀河がごく初期の宇宙で発⾒されたことは⼤きな驚きです。
この研究は、同研究チームによるアルマ望遠鏡の⼤型観測プログラムREBELS (Reionization Era BrightEmission Lines Survey)の⼀環として実施されました。当初のデータは解像度が⼗分でなかったため、回転円盤をもつ確証がありませんでしたが、今回、より⾼い像度でアルマによる追跡観測を⾏ったことで、この発⾒がなされました。このことについて、Algera研究員は「REBELS-25というこの銀河は、REBELSプログラムが狙った40天体のターゲットの中で当初から驚きを秘めた銀河として私たちを魅了していましたが、今回のアルマによる追跡観測はこの第⼀印象を⾒事に裏付けています」と語ります。
驚くべきことに、アルマ望遠鏡で得た今回のデータは銀河中⼼で棒構造や渦巻き状の腕のような特徴も⽰しており、私たちの住む天の川銀河に似た姿をしています。Algera研究員によると、アルマ望遠鏡のみならず「世界最⼤の宇宙望遠鏡であるジェームズ・ウェッブによる追観測で、アルマ望遠鏡に匹敵する解像度で若い星からの光を発⾒できるはず」と最遠⽅の回転円盤銀河の解明に期待を寄せています。
さらに、131億年前の宇宙で回転円盤をもつREBELS-25の発⾒は、ひょっとしたら他にも回転円盤銀河が宇宙初期に存在するかもしれないことを⽰しています。稲⾒助教いわく「初期宇宙の銀河の探査観測を重ねることで、REBELS-25と似た回転円盤銀河がさらに⾒つかる可能性は⼗分にあります。宇宙が進化するスピードは私たちがこれまで考えていたよりもずっと速かったかも知れませんね」とのこと、今後の調査への期待が⾼まります。
本研究は、「REBELS-25: z=7.31 における動的に冷たい円盤銀河の発⾒」として英国王⽴天⽂学会⽉報に掲載されました。
本研究は、アルマ望遠鏡⼤規模プログラム「REBELS: Reionization Era Bright Emission Lines Survey.」として推進されました。
アルマ望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計、Atacama Large Millimeter/submillimeter Array: ALMA)は、欧州南天天文台(ESO)、米国国立科学財団(NSF)、日本の自然科学研究機構(NINS)がチリ共和国と協力して運用する国際的な天文観測施設です。アルマ望遠鏡の建設・運用費は、ESOと、NSFおよびその協力機関であるカナダ国家研究会議(NRC)および台湾国家科学及技術委員会(NSTC)、NINSおよびその協力機関である台湾中央研究院(AS)と韓国天文宇宙科学研究院(KASI)によって分担されます。 アルマ望遠鏡の建設と運用は、ESOがその構成国を代表して、米国北東部大学連合(AUI)が管理する米国国立電波天文台が北米を代表して、日本の国立天文台が東アジアを代表して実施します。合同アルマ観測所(JAO)は、アルマ望遠鏡の建設、試験観測、運用の統一的な執行および管理を行なうことを目的とします。
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