アルマ広報に聞く、宇宙の秘密 vol.1地球以外に「生命」は存在するのか?

誰もが疑問に思う、「地球外生命体」の存在。じつは、それらの手がかりになるものは徐々に見つかり始めている。天文学の進歩によって太陽系の外にも惑星がたくさん見つかっており、そしてアルマ望遠鏡による観測では惑星誕生現場に有機分子が続々と発見されている。私たちが暮らす「地球」のように、生命を育むことができる星があるかもしれないのだ。
地球のような星、そして地球外生命体はどのくらいの確率で存在するのだろうか? そんな宇宙にまつわる素朴な疑問や仕組みについて、生命起源物質の探査にも挑むアルマ望遠鏡の教育広報担当・平松正顕助教が解説した。
インタビュー・テキスト:中村俊宏
撮影:豊島望

生命がいる星は、宇宙にたくさんあるのでしょうか?

――これまで天文学では、どのくらいの数の星や銀河を見つけてきたのでしょうか?

平松:ざっとですが、私たちの地球は1,000億個の星が集まった銀河系のなかに存在しています。そして宇宙には、銀河系のような銀河が数千億個あるだろうと考えられています。

 

――じゃあ、宇宙全体では星が1,000億個の数千億倍もあるのですか?

平松:単純計算だとそうなりますね。いまは、こんな便利なWindowsのソフト(Mitaka)があるので、ぜひ体験してもらえたらと思いますが、これまでの天文学で発見された銀河や星を、位置情報とともに3D空間に再現しているんです。

 

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Mitakaに表示される、銀河系のまわりのようす Credit: 4D2U Project, NAOJ. All rights reserved.

――うわ……すごいですね。ちょっとおかしな気持ちになりそうです(笑)。こんなにも膨大な数の星があるのに、地球のように生命体がいる惑星はまだ見つかっていないんですよね。今後見つかる可能性はありそうですか?

平松:私たちは地球の生命のことしか知らないので、はっきりとは言い切れません。でも個人的には、(アプリ画面を指差しながら)これほど多くの星がある宇宙のどこかにはいてもおかしくないと思っています。

 

――平松さんは、地球の外にはどんな生命がいると思いますか? 人類よりも進んだ文明を持った宇宙人みたいなものですか?

平松:生命といっても、微生物のような単純な生命から、動植物のような高等生命、さらには人類のような知的生命までいろいろあります。でも種類を問わないのであれば、たくさんいてもおかしくはないかと思っています。

 

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平松正顕(国立天文台チリ観測所助教、教育広報主任)、国立天文台(三鷹)にて

――それはなぜですか?

平松:生命がいる可能性のある星が増えているからです。系外惑星(太陽系の外にある惑星)が1995年に初めて発見されて以来、太陽以外の恒星のまわりでも惑星がたくさん見つかっています。夜空に輝く恒星の半分くらいは惑星を持っているかもしれないといわれています。1つの恒星のまわりに複数の惑星が存在するものも多いので、生命がいる惑星もそれなりにあると単純に思うんです。

 

生命の「材料」は宇宙にあふれている

平松:それと、天文学のこれまでの研究でわかったことは、宇宙には生命の材料が豊富にありそうだということです。

 

――生命の材料って、どんなものですか?

平松:たとえば、私たちの体を作っているタンパク質の材料となるアミノ酸は、地球に落下した隕石のなかからも発見されているので、地球の外でも、少なくとも太陽系内にはありそうだということがわかっています。

それからアミノ酸の材料となる、炭素や酸素などが多くつながった有機分子は太陽系の外の宇宙空間でも発見されているんです。これまでにアルマ望遠鏡も、惑星が誕生する現場でグリコールアルデヒドやメタノールといった生命の誕生に必要な分子を捉えました。これらの発見は、生命の起源を知る重要な手がかりになることが期待されています。

 

――つまり、生命の材料が宇宙にこんなにもあるので、単純な生命ならすぐに生まれてるかもしれないということですか?

平松:有機分子やアミノ酸がつながって、最終的に生命が誕生する確率がどのくらいあるのかはよくわかっていません。ですが地球上の生命の研究からは、生命はいったん発生すれば、非常に厳しい環境でも生き延びられることがわかっているんです。

 

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――たとえば、どんな環境ですか?

平松:非常に高温だったり超高圧だったり。それから放射線が強い場所だったり……。たとえば、「最強の生物」と言われるクマムシは、体長1ミリくらいの小さな動物ですが、「乾眠」という状態に入ってしまえば150℃の高温からほぼ絶対零度の低温にまで耐えられて、圧力は75,000気圧まで大丈夫という報告があります。極度の乾燥状態でも生き延びて、高線量の紫外線や放射線にも耐え、真空の宇宙空間でも10日ほど生きるそうです。

 

――まさに無敵ですね! 厳しい環境でも生きられる生命であれば、一度生まれてしまえば、生き残って栄えていけるんじゃないか、ということですね。

平松:あくまで地球上の生命の研究からの予想にすぎませんけれどね。生命の材料からどのくらいの確率で生命が発生するのかなどは、今後、分子生物学などと連携した研究が大事になると思います。

 

平松正顕(国立天文台チリ観測所助教、教育広報主任)

平松正顕(国立天文台チリ観測所助教、教育広報主任)

1980年、岡山県生まれ。博士(理学)。東京大学大学院理学系研究科天文学専攻博士課程修了。台湾中央研究院天文及天文物理研究所博士後研究員、アルマ地域センターアストロノマーを経て、2011年から現職。専門は電波天文学で、特に星の形成過程の研究を行う。またアルマ望遠鏡の広報担当として、執筆や講演などを精力的に行っている。

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