2002. 10. 11

2002年秋号 ジャコーニ氏 (AUI理事長) 2002年度ノーベル物理学賞受賞等

国立天文台のALMA (アルマ) 計画に関心をお持ちの皆さま
新聞やテレビで大々的に報道されておりますとおり、東京大学名誉教授の
小柴昌俊先生が今年度のノーベル物理学賞を受賞されました。同じ基礎科学
研究に携わる者として喜びに堪えません。また、これがきっかけとなって
「すぐには役に立たない」基礎科学研究の意義についての理解が進むことを
期待しております。
 また、小柴先生のニュースに隠れて日本では大きくは報道されていません
が、同時受賞となったRiccardo Giacconi氏は、ハッブル宇宙望遠鏡を擁す
る宇宙望遠鏡科学研究所の初代所長を経たのち、ESO (European Southern
Observatory=ヨーロッパ南天天文台) の台長としてヨーロッパのLSA計画
とアメリカのMMA計画のALMA計画への統合に尽力し、現在はAUI (Associated
Universities Inc.=米国北東部大学連合) のプレジデントという立場で
ALMA計画の北米側代表の一人として計画の推進に当たっておられます。
同じくALMA計画に携わる者として、推進メンバーの中核の一人がこのような
栄えある賞を受賞したことをたいへん嬉しく思います。
 外国の科学雑誌で日本のお家芸と評価されたニュートリノ物理学、高エネ
ルギー天文学、電波天文学のうち、ニュートリノ物理学と高エネルギー天文
学の2つが今年の物理学賞の対象となったことに深い感慨を覚えます。また、
受賞理由となった研究が、数十年を経たいま、さらに大きく発展を遂げよう
としていることも特筆に価するでしょう。ALMA計画は、ブラックホールの発
見をはじめとして原始銀河の発見や原始惑星系円盤の発見など科学史に残る
成果を生んだ野辺山の電波望遠鏡群の自然な発展形です。そして、野辺山と
ALMAの関係は、ニュートリノ物理学におけるカミオカンデとスーパーカミオ
カンデ、あるいは高エネルギー天文学における「ウフル」や「はくちょう」
とASTRO-EIIの関係に似ています。スーパーカミオカンデとASTRO-EIIが
着々と進行し、さらなる成果が期待されるなか、日本のお家芸の一つである
電波天文学分野において日本の科学的成果を発展させるためには、ALMA計画
へ日本が早期に主導的な立場で参加することが必要です。皆様におかれまし
てもALMA計画への日本の早期参加に向けて引き続きご協力くださいますよう
よろしくお願いいたします。
 さて、前置きがたいへん長くなりましたが、国立天文台が進めているALMA
計画の近況報告と、これから行われる一般向け講演会等についてのご案内を
お送りします。
※適宜更新する予定ですので、最新情報についてはALMAのホームページ
 http://www.nro.nao.ac.jp/alma/ をご覧下さい。
【近況報告】
 去る7月9日にはESOが2003年度からの建設開始を承認し、ALMAの建設は
ひとまず米欧2者が先行する形で今年中にも開始される状況となりました。
日本としては、北米・欧州にやや遅れての参加となることに伴い、国立天文
台を中心に、アンテナ・受信機・相関器等の分担を中心とする参加計画の
検討を進めているところです。
 9月17-18日にドイツで開催された拡大ALMA調整会議 (EACC) では、日本
から海部台長ほか計8名、米欧からR. Giacconi氏ほか計14名、合同ALMA
オフィスから計3名が参加し、主に日本の参加計画について議論されました。
米欧の委員からは国立天文台の参加計画を歓迎する旨の表明があり、今後さ
らに詳細な参加案を提示するように要請がありました。また、今後の日本参
加について検討・議論する枠組みとして交渉チームが組織されることになり
ました。
 一方、日本の参加計画の具体案を審議するために科学技術・学術審議会の
天文学研究ワーキンググループが開催されており、年内をめどに評価報告書
がとりまとめられる予定です。
 また、10月9日まで行われていた日本天文学会の秋季年会では、ALMA計画
の早期実現に向けた要望書を文部科学大臣宛てに送ることが決まりました。
【一般向け講演会・施設公開・展示等】
※日程は、ALMAに関係する部分のみを掲載しています。
◎プラネタリウム特別番組
 期間:2002年9月4日(水)-11月24日(日)
 場所:大阪市立科学館 http://www.sci-museum.kita.osaka.jp/
 番組:「電波でさぐる宇宙の謎」
 備考:11月2日-3日に行われる「こどものためのジオ・カーニバル」では
    ALMAの紙模型工作あり。
◎プラネタリウム特別番組
 期間:2002年10月5日(土)-2003年1月13日(祝)
 場所:山梨県立科学館 http://www.kagakukan.pref.yamanashi.jp
 番組:「ラジオスターレストランへようこそ」
◎鴨方町天文講座
 日時:2002年10月12日(土) 15:00-16:30
 場所:鴨方町健康福祉センター
 講演:「暗黒の宇宙にいどむ -アンデスの巨大電波望遠鏡ALMA-」
    阪本成一(国立天文台)
 備考:http://www.rweb.ne.jp/astro/
◎第3回国立天文台ALMA公開講演会「ビッグバンと宇宙の進化を探る」
 日時:2002年10月19日(土) 13:30-17:00
 場所:仙台市天文台 http://www.astro.city.sendai.jp
 講演:「ALMA計画について」松尾宏(国立天文台)
    「宇宙論研究の最前線」二間瀬敏史(東北大学)
    「アンデスの山奥から銀河とブラックホールの誕生に迫る」
    河野孝太郎(東京大学)
 備考:http://www.nro.nao.ac.jp/alma/J/koenkai/
◎国立天文台三鷹地区特別公開
 日時:2002年10月26日(土) 10:00-19:00
 場所:国立天文台(三鷹)
 内容:施設公開、展示、質問コーナー、講演会等
 講演:「君は天体誕生の目撃者になる ~アンデスの巨大電波望遠鏡
    アルマ~」長谷川哲夫(国立天文台)
    「光の宇宙と闇の宇宙 ~すばるからアルマへの銀河の旅」
    有本信雄(国立天文台)
 備考:http://www.nao.ac.jp/open-day/
    今年度のメインテーマは「アンデスの巨大電波望遠鏡・アルマで
    えがく暗黒の宇宙」。通常の見学は年末年始等を除き毎日可能。
◎第17回「大学と科学」公開シンポジウム
 『星の誕生-天の川、マゼラン銀河、そして私たち-』
 日時:2002年10月30日(水)-31日(木) 両日とも10:00-17:00
 場所:有楽町朝日ホール (有楽町マリオン11F)
 講演:「私たちの太陽系は特別か」観山正見(国立天文台) ほか
 備考:http://www.kuba.co.jp/US17/galaxy.html
◎やさしい天文教室
 日時:2002年11月2日(土) 13:00-15:30
 場所:多摩六都科学館 http://www.tamarokuto.or.jp/
 講演:「宇宙の暗やみにいどむ ― アンデスの巨大電波望遠鏡計画
    (アルマ)」齋藤正雄(国立天文台)
 備考:http://www.tamarokuto.or.jp/event.html
    事前申込は10月20日締切。子供向け。模型工作込み。
    講演者に変更あり。
◎朝日カルチャーセンター「150億光年宇宙紀行」
 日時:2002年12月7日(土) 10:30-12:30
 場所:朝日カルチャーセンター新宿教室
 講演:「電波で迫る宇宙の謎」石黒正人(国立天文台)
 備考:http://www.acc-web.co.jp/kyoyo/kyoyo-sizenkagaku.htm
◎小さな天文学者の会 第19回学習会
 日時:2002年12月14日(土)
 場所:山形大学小白川キャンパス
 講演:「君は天体誕生の目撃者になる ~アンデスの巨大電波望遠鏡
    アルマ~」長谷川哲夫(国立天文台)
 備考:http://astr-www.kj.yamagata-u.ac.jp/newastronomer/
◎プラネタリウム特別番組
 期間:2002年12月頃-?
 場所:あすたむらんど徳島 http://www.comet.go.jp/asutamu/
 番組:「ALMA ~とどけたい 未来の君へ~」
◎第442回駿台天文講座
 日時:2003年1月18日(土) 17:00-18:00
 場所:駿台学園
 講演:「アルマ(ALMA)への道」石黒正人(国立天文台)
 備考:http://www.sundaigakuen.ac.jp/d/
【キッズコーナー】
 ALMAのアンテナのペーパークラフトの型紙をALMAのホームページ
http://www.nro.nao.ac.jp/alma/ のキッズコーナーにて公開しています。
すばる望遠鏡や岡山の望遠鏡などの型紙も公開されました。型抜きされた
ものは各種イベントでも配布する予定です。その他にも、パズルなどを順次
公開中です。お楽しみに。

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