2014. 8. 12

【ALMA Mail Magazine】 2014年8月12日号 ~アルマ望遠鏡、互いに傾いた原始惑星系円盤を連星系で発見~

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▲▲▲ ALMA Mail Magazine 2014年8月12日号
Atacama Large Millimeter/submillimeter Array
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――― 国立天文台アルマ望遠鏡に関心をお持ちの皆さま ―――
毎月「月齢16」の夜にお届けしているアルマ望遠鏡メールマガジン。
国立天文台のフラッグシップ望遠鏡のひとつ、アルマ望遠鏡に関する
最新情報をお知らせします。
最新情報はアルマ望遠鏡のウェブサイト http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/
ならびにアルマ望遠鏡Twitterアカウント http://twitter.com/ALMA_Japan
をご覧ください。
INDEX
最新情報
  8月 6日 アルマ望遠鏡、冥王星の精密位置測定でNASAニューホライズンズ探査機をナビゲート
  8月12日 アルマ望遠鏡で探る、彗星での有機分子合成
アルマ通信
  7月15日 サンチャゴ日本人学校での七夕講演会
PICK UP!
  7月31日 アルマ望遠鏡、互いに傾いた原始惑星系円盤を連星系で発見
イベント情報
  8月16日 平塚市博物館夏季特別展 講演会
  8月23日 国立天文台野辺山 特別公開
~9月23日 宇宙博2014
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 ■ 最新情報 ■
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◎ 8月 6日 アルマ望遠鏡、冥王星の精密位置測定でNASAニューホライズンズ探査機をナビゲート
アルマ望遠鏡により、冥王星とその衛星カロンの位置が非常に精密に測定されました。
この位置情報は、2015年に冥王星接近を予定しているアメリカ航空宇宙局(NASA)の冥王星
探査機ニューホライズンズの軌道修正に活かされます。
1930年の発見以来、冥王星の観測はさまざまな望遠鏡で続けられてきましたが、冥王星の
軌道は非常に大きいため、これまで人類が観測できたのは冥王星の軌道の1/3に過ぎず、
冥王星の位置推定にはまだまだ大きな誤差があります。これでは効率よく確実に探査機を
送り込むのに支障をきたすため、アルマ望遠鏡による高精度位置測定観測が行われました。
光の観測では恒星を位置の基準として使いますが、恒星はわずかながら年々位置を変えま
す。一方それに比べてずっと遠方にありほとんど移動しないクェーサーと呼ばれる天体を
アルマ望遠鏡は電波で観測し、これを基準にすることで冥王星の位置を精密に測定しまし
た。下記リンク先には、アルマ望遠鏡が電波でとらえた冥王星とその衛星カロンの姿を
掲載しています。
[最新情報] アルマ望遠鏡、冥王星の精密位置測定でNASAニューホライズンズ探査機をナビゲート
http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/info/2014/0806nasa.html
◎ 8月12日 アルマ望遠鏡で探る、彗星での有機分子合成
アルマ望遠鏡を使った観測により、彗星の周囲での分子合成についての新しい知見が
得られました。彗星は、太陽系の中ではもっとも古く原始的な状態に近い天体と考え
られています。彗星における化学を理解することは、太陽系そのものや生命の素に
なったかもしれない有機物の起源を知ることに繋がります。
アメリカ航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターで研究を行うマーティン・
コーディナー氏が率いる国際研究チームは、アルマ望遠鏡を用いてアイソン彗星と
レモン彗星を観測し、彗星を取り巻く薄いガス(コマ)の史上最高解像度のデータを
取得しました。そして研究チームは、このデータをもとにコマの中でのさまざまな
分子の「3次元」分布を明らかにしました。「彗星の性質を理解するには分子の分布の
観測が大変重要ですが、今回アルマ望遠鏡による観測で初めてその観測が実現でき
ました。」とコーディナー氏は語っています。
[最新情報] アルマ望遠鏡で探る、彗星での有機分子合成
http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/info/2014/0812post_555.html
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 ■ アルマ通信 ■
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◎ 7月15日 サンチャゴ日本人学校での七夕講演会
毎年恒例になっている、サンチャゴ日本人学校での七夕講演会。今回は国立天文台
チリ観測所の浅山信一郎准教授が講師を務めました。サンチャゴで撮影した織姫星
と彦星の位置を示した夜空の写真から入り、宇宙の大きさについて子供たちにわかり
やすくお話をしました。たとえ話を交えた講演に会場には子供たちの笑顔が溢れて
いました。
また国立天文台が公開している四次元デジタル宇宙ビューワーMitakaを利用し、
直感的に太陽系の位置や星の距離、銀河の大きさなどを理解してもらいました。
オーッという子供たちの驚きと歓びの声が沸き、目がいっそう輝いて好奇心は増す
ばかりでした。南半球で冬休みを迎える子供たちにとって、1学期を締めくくる良い
思い出となったでしょうか。
[アルマ通信] サンチャゴ日本人学校での七夕講演会
http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/alma/2014/0715post_552.html
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 ■ PICK UP! ■
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◎ 7月31日 アルマ望遠鏡、互いに傾いた原始惑星系円盤を連星系で発見
アルマ望遠鏡を使った観測により、若い連星系おうし座HK星を構成するそれぞれの
星のまわりに、傾きの異なる原始惑星系円盤が発見されました。連星系を成すそれ
ぞれの星のまわりの原始惑星系円盤の様子をこれほどまでにはっきりと描き出した
のは、今回のアルマ望遠鏡による観測が初めてのことです。
太陽は一人っ子の星ですが、宇宙にある星の多くは双子(あるいは三つ子以上)を
成しています。こうした環境でどのような惑星が生まれるのか、あるいは生まれた
惑星がどんな軌道を取るのかはこれまであまりわかっていませんでした。今回の
アルマ望遠鏡による連星の観測により、連星のそれぞれの星のまわりに惑星の元と
なる原始惑星系円盤があり、それが互いに傾いているということがわかりました。
連星系という複雑な重力が働く環境下では、原始惑星系円盤が傾いていることに
よって、その中で作られる惑星の軌道が大きく傾いたり長く引き伸ばされたりされ
ると考えられます。今回の観測結果は、こうした軌道を乱すメカニズムが惑星誕生の
段階に存在していることを示しています。
[最新情報] アルマ望遠鏡、互いに傾いた原始惑星系円盤を連星系で発見
http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/news/info/2014/0731post_553.html
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 ■ イベント情報 ■
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◎ 8月16日 平塚市博物館夏季特別展 講演会
「アルマ望遠鏡で見つめる星と惑星の誕生」
講演者:平松 正顕(国立天文台チリ観測所助教)
時間:15:30~17:00
会場:平塚市博物館 講堂
申込:不要
[詳細] 平塚市博物館 特別展・企画展案内
http://www.hirahaku.jp/tokubetsuten_kikakuten/t_hitori/index.html
◎ 8月23日 国立天文台野辺山 特別公開
会場:国立天文台野辺山宇宙電波観測所 (長野県南佐久郡南牧村)
時間:9:30 – 16:00(入場は15:30まで)
内容:ポスター展示、映像展示、講演会など
[詳細] 国立天文台野辺山 特別公開2014
http://www.nro.nao.ac.jp/visit/open2014/open2014_top.html
◎ ~9月23日 宇宙博2014
会場:幕張メッセ 国際展示場10・11ホール (千葉県千葉市)
時間:9:30 – 17:00(入場は16:30まで)
内容:アルマ望遠鏡日本製アンテナ 1/20 模型、超伝導受信機2種、
   建設地調査時のノートを展示
[詳細] 宇宙博2014
http://www.space-expo2014.jp/
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 ■ あとがき ■
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イベント情報でもお知らせしました通り、『宇宙博2014』が幕張メッセで開催中です。
国立天文台アルマ望遠鏡プロジェクトからは、日本製12m/7mパラボラアンテナの1/20
スケールモデルと、国立天文台先端技術センターで開発・組立がなされたバンド4・
バンド10超伝導受信機の実物、そして1990年代にアルマ望遠鏡の建設地を探して天文
学者が荒野を駆け廻っていた時のノート3冊を展示しています。国際宇宙ステーション
「きぼう」実験棟や火星探査車キュリオシティなどの実物大模型に比べると派手さは
無いかもしれませんが、精緻な加工が施された受信機や、建設地調査時の生々しい走り
書きをぜひじっくりごらんください。個人的なおススメは、この建設地調査ノート。
「この辺一帯大平原」「道がないので引き返す!」という文字に、次世代の超高性能
電波天文台を夢見ながら四駆を駆っていた天文学者の想いがこもっているような気が
します。この他国立天文台からは、すばる望遠鏡の模型や、建設開始が決まった30m
望遠鏡TMTの模型と主鏡分割鏡の試作品も出展しています。
残念ながら宇宙博ではアルマ望遠鏡スタッフが展示物の解説をすることはありませんが、
直接スタッフと対話ができるのが、8月23日に開催される国立天文台野辺山の特別公開
です。日本の電波天文学の中心地であり、アルマ望遠鏡のルーツの一つとなったこの
観測所の特別公開に、アルマ望遠鏡プロジェクトは今年も参加します。アルマ望遠鏡の
概要や最新の成果、現地での暮らしぶりや日本でのサポート業務など、アルマ望遠鏡に
関わるさまざまな事柄について、アルマ望遠鏡に関わるスタッフと直接会話することが
できます。最先端の技術を駆使して地球の反対側で稼働しているアルマ望遠鏡ですが、
やはり動かしているのは「人」。どんな人がどんな想いでアルマ望遠鏡に携わっている
のか、ぜひ感じてみてください。
■ご意見、ご感想はお問い合わせフォームからお寄せください。
 お問い合わせフォーム:http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/inquiry/
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国立天文台 チリ観測所 http://alma.mtk.nao.ac.jp/j/
Copyright(C) 2014 Atacama Large Millimeter/submillimeter Array(ALMA), NAOJ.
All rights reserved.
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