若い大質量星を育てる巨大なガス流

アルマ望遠鏡の精細な観測能力によって、生まれつつある大質量星に向かって回転しながら落ち込んでいく渦巻状のガスの動き(ストリーマ)が捉えられました。強力なガス流のお陰で、質量の大きなガス円盤がなくても原始星に高い効率でガスが供給されているようです。この発見は、大質量星の形成には巨大な円盤が必要だとするこれまでの考え方を改め、新しい星形成の理解を切り開くかもしれません。
(この記事、は2025年8月22日に京都大学から発表されたニュースに基づくものです。)

太陽の10倍程度の質量を持つ大質量星は、宇宙でも最大級の高エネルギー現象である超新星爆発を起こして一生を終えます。巨大な爆発は銀河進化にも影響を与え、また太陽のような恒星よりも効率的に星間物質に重元素を共有します。大質量星自身も、強い放射で周囲のガスを吹き飛ばし電離して、近隣の星形成活動を左右しています。
このように重要な天体であるにもかかわらず、大質量星の誕生には多くの謎が残っています。形成現場が濃いガスと塵(ちり)の雲に深く埋もれており、さらに小質量星形成領域よりも太陽系から遠いところにあるためです。若い大質量星が周囲を包むガス雲を加熱すると、塵の微粒子から分子が揮発して電波を放射し始めます。同時に、塵粒子自体も恒星の光を吸収して電波波長で再放射します。高い空間分解能での電波観測で、このような埋もれた星形成環境をのぞき込む窓を開くアルマ望遠鏡を用いることで、研究者は誕生中の星の周囲のガスの運動と分布を追跡することができるのです。

国際チームを率いた京都大学と東京大学の研究者らは、天の川銀河内の星形成分子雲G336.01−0.82に対して、塵とメタノール分子(CH₃OH)からの電波放射を捉えるため、アルマ望遠鏡が最高の解像度を発揮する最大範囲に展開したアンテナ配列で観測を行いました。以前の観測では、中心天体を包み込む2000天文単位(注)離れた外縁から内側の500天文単位まで物質を運ぶ複数のガスの流れ(ストリーマ)が発見されており、内部にある比較的大きなガス円盤に物質を供給していると考えられていました。しかし、最新の高解像度観測の結果、500天文単位以内の領域が全く異なる構造をしていることが暴かれたのです。

塵からの放射は、ガスの流れが若い星の近傍まで全体につながっていることを示しており、一方で星周の過密な領域は小さな円盤に対応している可能性があります。「メタノール分子で見えたガスの運動から、大規模なストリーマによって新しいガスが運び込まれ、中央の過密な領域を維持している様子が明らかになりました」と研究をリードしたフェルナンド・オルギン京都大学特任助教は語ります。過密なガスが円盤構造をしていれば、星形成を阻害する中心星からの強烈な放射を両極の方向から逃がすことができ、落下ガスを赤ちゃん星に供給し続けることも可能です。「この天体は、巨大なガス円盤を作らなくても若い大質量性を成長させる別の方法があることを示しているのです。」

研究チームは、アルマ望遠鏡で観測された数多くの天体の中から同じような状況を見つけていくことに注目しています。小質量原始星を生み出すガス雲の研究では、多くのストリーマが分子ガスの放つ電波放射で検出されています。研究チームは、原始星周辺のガスの運動を探査することで、多くのストリーマが見つけられると期待しています。この手法は、若い大質量星を成長させる新たなメカニズムの研究に寄与していくでしょう。

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成長中の大質量星に物質を供給する渦巻状のガスの流れ「ストリーマ」の想像図。(クレジット:国立天文台)

この研究成果は、Olguin et al. “Massive extended streamers feed high-mass young stars” としてScience Advances誌に2025年8月20日付で掲載されました。DOI: 10.1126/sciadv.adw4512

本研究は、国立天文台ALMA共同科学研究事業(2024-27B)をはじめ、国内外からの研究助成を受けて行われました。

関連リンク

若い大質量星を育てる巨大なガス流―フィードバック問題の解決に新たな手がかり― (京都大学|最新の研究成果を知る)

アルマ望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計、Atacama Large Millimeter/submillimeter Array: ALMA)は、欧州南天天文台(ESO)、米国国立科学財団(NSF)、日本の自然科学研究機構(NINS)がチリ共和国と協力して運用する国際的な天文観測施設です。アルマ望遠鏡の建設・運用費は、ESOと、NSFおよびその協力機関であるカナダ国家研究会議(NRC)および台湾国家科学及技術委員会(NSTC)、NINSおよびその協力機関である台湾中央研究院(AS)と韓国天文宇宙科学研究院(KASI)によって分担されます。 アルマ望遠鏡の建設と運用は、ESOがその構成国を代表して、米国北東部大学連合(AUI)が管理する米国国立電波天文台が北米を代表して、日本の国立天文台が東アジアを代表して実施します。合同アルマ観測所(JAO)は、アルマ望遠鏡の建設、試験観測、運用の統一的な執行および管理を行なうことを目的とします。

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