2017年10月から開始されるアルマ望遠鏡科学観測サイクル5で実行される観測提案の審査が完了し、提案を出していた天文学者に審査結果が通知されました。サイクル5には、世界中から1661件(重複等を除く)の観測提案が提出されていました。146名の天文学者が審査員となって、6月のベルギーのアントワープで行われた最終審査の結果433件の提案が採択されました。
「アルマ望遠鏡観測提案審査委員会の146名のメンバーからの専門的な助言により、客観的に観測の優先順位づけを行うことができます。これは、アルマ望遠鏡が最先端の科学を切り開く存在であり続けるために大変重要です。」と、観測提案審査の責任者ゴティエ・マティス氏は語っています。審査員となった天文学者は、1週間にわたってアントワープの審査会場に滞在し、どの観測提案が素晴らしい成果をもたらしてくれるかを膝を突き合わせて議論しました。
アルマ望遠鏡の観測提案は、対象によって5つのカテゴリーに分けられています。最も多くの観測提案が提出されたのは、『星間物質・星形成・星間化学』のカテゴリーでした(422件中105件が採択)。次に多かったのは、『観測的宇宙論・遠方宇宙』(386件中100件が採択)であり、続いて『銀河・銀河中心核』(354件中102件が採択)、『星周円盤・太陽系外惑星・太陽系』(354件中85件が採択)、そして『恒星進化・太陽』(145件中41件が採択)でした。
12メートルアンテナからなる「12メートルアレイ」の観測時間の地域別割り当ては、欧州34%、北米33%、東アジア22%、チリ10%、その他地域に1%となりました。日本が開発した「アタカマコンパクトアレイ(モリタアレイ)」では、欧州25%、北米36%、東アジア29%、チリ10%となっています。
サイクル5の観測は2017年10月から2018年9月まで、全66台中56台以上のアンテナを使って実施されます。観測周波数帯もバンド3~10(84~950 GHz)と拡大され、特にバンド5(163~211 GHz)が初めて科学観測に供されます。またサイクル5では、低い周波数帯においてはアンテナの展開範囲が最大で16kmまで拡大され、最高解像度は0.018秒角(人間の視力に換算すると約3300)に達します。