バンド10受信機チーム 小嶋崇文氏が日本天文学会研究奨励賞を受賞

アルマ望遠鏡バンド10受信機開発チームの小嶋崇文 国立天文台先端技術センター助教が、2013年度日本天文学会研究奨励賞を受賞しました。受賞対象となった研究テーマは「ALMA Band 10 低雑音SIS ミキサの研究開発」です。

バンド10受信機は、アルマ望遠鏡が観測する電波のうち最も周波数の高い電波(787~950GHz)を受信する受信機で、日本が開発・量産を分担しました。高周波の電波受信機の心臓部は超伝導技術を用いた「SISミキサ」ですが、バンド10受信機ではその高い周波数のため、これまでSISミキサに使われてきたニオブという物質では十分な性能が出せませんでした。このため開発チームは窒化ニオブチタンという合金を超伝導材料として使うことで、世界最高性能の受信機の開発に成功しました(参考:2009年6月16日プレスリリース『世界最高性能のサブミリ波(テラヘルツ)受信機の実現 ―ALMAにおける最高周波数受信機バンド10の開発に成功―』)。

小嶋氏は大学院時代からバンド10受信機の開発に携わってきました。日本天文学会による受賞理由(下記)では、技術的困難を乗り越えて高性能受信機を開発した業績が高く評価されています。

2013年度 日本天文学会 研究奨励賞 受賞理由
『ALMA (Atacama Large Millimeter/submillimeter Array)は日米欧が共同で南米チリの標高5000mのアタカマ高地に建設した合計 66 基のアンテナから構成される電波干渉計である。小嶋氏はその最高周波数帯・Band 10 (0.78-0.95 THz)で低雑音・広帯域受信機を実現するためにその心臓部であるSIS(Superconductor-Insulator-Superconductor)ミキサの研究開発をしてきた。電波天文学において、0.5 THz以上は未開拓周波数帯でありプロジェクト開始当初は数々の技術的課題が存在したが、小嶋氏は作製技術の見極めと緻密なモデリングに基づいて設計し、広帯域低雑音SISミキサの実現、導波管カプラ一体型ミキサの実現、4 -12 GHz冷却IF(中間周波数)系構築などの成果を挙げ、Band 10 受信機の開発に成功した。さらに試験観測によりその性能を実証した。その優れた業績により2013年度研究奨励賞を授与する。』

今回の受賞を受けて小嶋氏は以下のようにコメントしています。
「この度栄誉ある日本天文学会研究奨励賞を賜り、大変うれしく思います。本開発は天文台内外関係者の御指導・御協力なくして成し遂げられませんでした。また、ALMA Band 4やBand 8受信機における技術開発やBand 10が始まる以前から実施されてきた技術的検討や実験的知見等に基づいて開発が進められてきたということも忘れてはなりません。今後はALMAのミキサ開発で得た経験を活かし、新しい受信機開発にまい進する所存です。」

写真は、国際基督教大学で開催された日本天文学会2014年春季年会で受賞記念講演を行う小嶋氏です。

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