アルマ望遠鏡、最初の観測提案を募集

史上最も先進的な電波望遠鏡であるアルマ望遠鏡(ALMA: Atacama Large Millimeter/submillimeter Array)が、ついに世界の天文学者に向けて観測提案の募集を発表しました。アルマは完成時には高精度パラボラアンテナ66台を備える巨大な望遠鏡となり、今年開始される初期科学運用ではそのうち直径12mのパラボラアンテナ16台を使用します。パラボラアンテナの数は完成時の1/4程度にもかかわらず、初期科学運用の時点ですでに現在稼働中の同種の電波望遠鏡を大きく上回る観測性能を誇ります。

アルマ望遠鏡は、南米チリ北部、アンデス山中のチャナントール高原(標高5000m)に作られています。人間の目や光学望遠鏡ではとらえることのできない電波(ミリ波・サブミリ波)をとらえることで、アルマ望遠鏡は宇宙についての私たちの知識を大きく塗り替えてくれることでしょう。アルマ望遠鏡の観測対象は、私たちが住む銀河系やその外にある銀河に含まれる分子ガスや塵、さらに宇宙の始まりであるビッグバンの名残など多岐にわたります。アルマ望遠鏡を用いることで、星の、惑星系の、銀河の、そして生命の材料までをも研究することができるのです。

アルマ望遠鏡では現在、初期科学運用開始に向けた準備が着々と進められています。アルマ望遠鏡の建設はまだ完了しておらず、これまでは望遠鏡システムの性能を確認するための試験観測がおこなわれてきました。今年から始まる初期科学運用期間を経て、2013年にはアルマ望遠鏡は直径12mのパラボラアンテナ54台と直径7mのパラボラアンテナ12台を備えることになります。これらで集められた電波をコンピューター上で結合させることによって、アルマは直径16km以上のひとつの巨大な電波望遠鏡となるのです。

このアルマ望遠鏡を使った観測提案の募集が、今日2011年3月30日に世界の天文学者に向けて発表されました。研究者たちはアルマ望遠鏡を使うために、まず各自の観測提案を練り上げ、それを6月中にアルマ観測所に提出します。提出された観測提案は、米国テキサス大学のニール・エヴァンス教授を筆頭とする専門家集団により審査されます。この審査を経て、アルマ望遠鏡を有効に使い価値ある観測成果をもたらすと期待される観測提案が採択されることになります。

ヨーロッパ、北アメリカ、東アジアにそれぞれ設置されたアルマ地域センターは、アルマ望遠鏡を使って研究することを考えている各地域の天文学者に対するさまざまな支援を行います。

初期科学運用は2011年9月末から開始され、およそ9カ月間続く予定です。この初期科学運用の観測時間として500から700時間程度が確保され、ヨーロッパ、北アメリカ、東アジア、そしてアルマ望遠鏡のホスト国であるチリに配分されます。この初期科学運用と並行して、合計66台のパラボラアンテナを備える完成形態へ向けた建設と試験観測も引き続き行われます。

アルマ望遠鏡を運用する合同アルマ観測所長のタイス・ドゥフラウ氏は「私たちは、世界中の天文学者がアルマ望遠鏡を用いた観測を開始するのをとても楽しみにしています。それと同時に、アルマ望遠鏡の完成に向けた作業も全力で進めていきます。このような大きなプロジェクトは、アルマに関わる多くの国の協力なしには成し遂げることができません。この国際協力のおかげでさらに17台のパラボラアンテナの建造もアルマ観測所の敷地内で進んでいますので、今後数カ月間の建設の進展には目を見張るものがあるでしょう。」と語っています。

アルマ望遠鏡プロジェクトは、ヨーロッパ、北アメリカ、東アジアとチリの国際協力プロジェクトです。

より詳しい情報について
アルマ望遠鏡の詳しい性能、観測提案の応募方法、アルマ望遠鏡データの取得方法、その他アルマ望遠鏡の公式情報やツールは、アルマ サイエンスポータル(英語)で見ることができます。

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