新しいアルマ受信機の試験に成功 ―宇宙における私たちの起源に迫る新しい窓を開く―

アルマ望遠鏡の天文学者と技術者からなる国際チームは、新しい受信機を複数のアンテナに搭載した最初の観測を行いました。これは、アルマ望遠鏡が今、建設当初に設計していたうちの最後の周波数領域である2.6~4.5ミリメートルの波長域(= 67~116ギガヘルツの周波数帯域)について、最初の試験観測ができるようになったことを意味します。この「バンド2」受信機は、遠方の星や銀河がどのようにして形成されるのか、惑星の起源や生命の構成要素に至る様々な事象を解き明かす観測を可能とし、宇宙における私たちの起源に迫る新しい窓を開きます。

10 receivers inside an ALMA cryostat

チリのチャナントール高原に建設されたアルマ望遠鏡は合計66台のアンテナからなり、アンテナ1つ1つに非常に高感度の10帯域の受信機が搭載されています。各帯域の受信機は、電磁波スペクトルにおけるミリ波/サブミリ波領域の中で、それぞれ決まった周波数帯域(波長域)を観測します。これら受信機全体で、0.3から8.6ミリメートル(= 950~35ギガヘルツ:バンド10~バンド1に対応)の「観測窓(周波数帯域)」をカバーします。今回開発されたバンド2受信機は、これまでアルマで観測されなかった67~84ギガヘルツの新しい窓を開くとともに、現在運用中のバンド3受信機によってカバーされている84~116ギガヘルツの周波数帯域も観測できます。

今年初めに、バンド2の1台目の初期量産受信機(*)が、アルマ望遠鏡のアンテナへの搭載、試験に成功しました。今回、2台目および3台目の受信機が、さらに別の2つのアンテナに搭載され、干渉計としての観測――明るい天体からの複数の信号の相関から得られる干渉パターンを測定することが可能になりました。この「ファーストフリンジ(最初の干渉縞)」は、バンド2受信機として初めて複数のアンテナからの信号を組み合わせることが可能になったことを意味し、重要なマイルストーンを達成したことを意味します。さらにより多くのアンテナへのバンド2受信機の搭載が進むにつれ、詳細さと感度レベルが向上し、これまで以上に精細に宇宙の観測ができるようになります。

バンド2の周波数帯の観測により、冷たい星間物質――星間空間に存在し、星形成の材料となる塵と分子ガスの混合物の重要な測定が可能になります。また、アルマ望遠鏡で、惑星形成円盤から遠方銀河までを対象として、塵や分子の性質を、これまでは決して達成できなかった詳細なレベルで研究できるようになります。

地球に近い領域の観測では、新しい受信機をもちいることにより、近くの銀河の複雑な有機分子の観測を可能にし、生命誕生の条件がどのようにして作られるのかの謎に迫る鍵を与えてくれるでしょう。また、バンド2の周波数帯は、一酸化炭素の「スノーライン」(惑星を生み出す円盤で中心星から遠いためにガスが凝縮する領域)を調べることにより、惑星がどのようにして形成されるのかの理解を深めるのにも重要です。

バンド2受信機は欧州南天天文台 ESO (European Southern Observatory)が主導し、国立天文台やチリ大学、複数のヨーロッパの研究機関や企業が連携協力して開発しました。初期量産は、ESO主導のもと、オランダの天文学研究組織NOVA(Netherlands Research School for Astronomy)、スウェーデンのチャルマース工科大学オンサラ天文台の先端受信機開発グループGARD (Advanced Receiver Development group)、イタリア国立天体物理学研究所 INAF (Italian National Institute for Astrophysics) からなるコンソーシアムが冷却カートリッジ・アセンブリ、常温カートリッジ・アセンブリの製造評価を、国立天文台がレンズをはじめとする光学系部品の製造評価を担当し、協力して実施されました。

現在、チームは初期量産受信機の性能の最適化に取り組もうとしており、その後、66台の全てのアンテナへの搭載に向けて受信機の本格量産を行います。これは、アルマの観測の新しい時代の到来を告げるものです。バンド2受信機の搭載と、現在のシステムの補完的に2030年代に向けて計画されているアルマ望遠鏡のアップグレードとを合わせると、一度に観測できる周波数帯域を現在のアルマ受信機の4倍以上広げることが可能となり、観測スピードを劇的に上げることができます。

(*)初期量産:アルマでは、量産初期に数台(バンド2受信機の場合は6台)の装置を製造、実装して検証し、性能等を確認したのちに本格量産を実施します。

アルマ望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計、Atacama Large Millimeter/submillimeter Array: ALMA)は、欧州南天天文台(ESO)、米国国立科学財団(NSF)、日本の自然科学研究機構(NINS)がチリ共和国と協力して運用する国際的な天文観測施設です。アルマ望遠鏡の建設・運用費は、ESOと、NSFおよびその協力機関であるカナダ国家研究会議(NRC)および台湾国家科学及技術委員会(NSTC)、NINSおよびその協力機関である台湾中央研究院(AS)と韓国天文宇宙科学研究院(KASI)によって分担されます。 アルマ望遠鏡の建設と運用は、ESOがその構成国を代表して、米国北東部大学連合(AUI)が管理する米国国立電波天文台が北米を代表して、日本の国立天文台が東アジアを代表して実施します。合同アルマ観測所(JAO)は、アルマ望遠鏡の建設、試験観測、運用の統一的な執行および管理を行なうことを目的とします。

10 receivers inside an ALMA cryostat

真空冷凍容器(クライオスタット)におさめられた10帯域の受信機
Credit: S. Otarola/JAO/ESO

Cold cartridge assembly of an ALMA Band 2 receiver

アルマ望遠鏡バンド2受信機 冷却カートリッジ・アセンブリ
Credit: NOVA/ESO

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アルマ望遠鏡バンド2受信機 常温カートリッジ・アセンブリ
Credit: NOVA/ESO

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アルマ望遠鏡バンド2受信機常温光学系
Credit: ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)

ALMA antennas from the air

アルマ望遠鏡アンテナの航空写真
Credit: ESO

Close-up view of ALMA antennas

アルマ望遠鏡アンテナのクローズアップビュー
Credit: ESO

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