今回の電波源はうみへび座W星(W Hya)です。うみへび座W星は強い電波源として知られており、電波望遠鏡の性能を確かめるためによく観測される天体でもあります。左のグラフには電波の強度を表すピークが表れています。
アルマはミリ波・サブミリ波という30ギガヘルツから950ギガヘルツの周波数帯を観測することで、まだ見ぬ宇宙の謎の解明に挑みます。受信機は、10種類の周波数帯(バンド1から10)に分けられ、各国で分担して開発・製造が進められています。日本は10種類のうち、バンド4(125から163ギガヘルツ)、バンド8(385から500ギガヘルツ)、バンド10(787から950ギガヘルツ)の3種類を担当しています。
天体からの微弱な電波を受信するため、受信機には世界最高の性能が求められます。受信機の心臓部には、宇宙からの電波を扱いやすい低周波数に変換するミクサがあります。このミクサには超伝導素子が使用されていますが、先端技術センターではクリーンルームを備え、超伝導素子を独自に製造しています。その他、受信機カートリッジに使われている部品の設計から組み上げ、調整、試験などは、すべて先端技術センター内で行われています。
バンド4、バンド8受信機は2009年6月22日から25日に詳細設計審査会を受け、専門家で構成される審査委員会によって合格判定が得られました。続く9月4日にはバンド4受信機が先端技術センターから出荷され、チリのアルマ観測所でアンテナに搭載されて評価試験を行っていました。バンド4受信機の評価試験に立ち会った浅山信一郎JAO国際職員は、「詳細設計審査会からちょうど一年の2010年6月22日に初めてスペクトルを取得できたことは感慨深いものがあります」と、感想を述べています。
6月30日には、バンド4受信機に続き、バンド8受信機での初スペクトル取得に成功しました。これで日本が開発、製造した2種類の受信機でのスペクトル取得に成功したことになります。今後は、詳細な性能評価を進めていきます。
受信機の開発・製造は国立天文台、三鷹キャンパスの先端技術センターで行われており、現在は量産化に向けて2号機、3号機の製造が進められています。
受信機開発を行っている関本裕太郎チームリーダーは、次のようにコメントしています。「出荷した受信機が順調に運用されていることを大変嬉しく思います。すべての受信機の完成まではまだまだ長い道のりですが、今回の知らせを励みに、日夜、製造に取り組んでいきます。」