このプレスリリースは、2016年8月11日に東京大学より主導発表されたものです。詳しくは、東京大学大学院理学系研究科のプレスリリース をご覧ください。
多くの銀河の中心には太陽質量の100万倍以上もの質量を持つ超巨大ブラックホールが普遍的に存在することが明らかになってきましたが、その形成過程は未だ謎に包まれており、現代天文学が解決すべき最重要テーマの1つとなっています。
東京大学大学院理学系研究科の泉拓磨日本学術振興会特別研究員、河野孝太郎教授、呉工業高等専門学校の川勝望准教授からなる研究チームは、アルマ望遠鏡などで得た高解像度の電波観測データを用いて、近傍宇宙の複数の銀河で、その中心の超巨大ブラックホールの周囲数100光年にわたって広がる低温・高密度な分子ガス円盤を調査しました。その結果、そうした高密度分子ガス円盤が、超巨大ブラックホール成長における重要なガス質量の供給源として機能していることを初めて発見しました。また、「高密度分子ガス円盤内で形成された大質量星が超新星爆発を起こし、ガス中に強い乱流が発生することで、さらに内側へのガス供給が促進される」という理論モデルで、銀河中心部でのガス質量流入・流出の収支が整合的に説明できることも明らかにしました。
これらは、超巨大ブラックホールの起源に迫る重要な成果であり、今後はアルマ望遠鏡等を用いた遠方宇宙のブラックホール天体の詳細観測から、宇宙の古今にわたるブラックホール成長の包括的な理解が進むと期待されます。
この研究成果は、Izumi et al. “Do Circumnuclear Dense Gas Disks Drive Mass Accretion onto Supermassive Black Holes?” として、2016年8月11日発行の米国の天文学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に掲載されました。
下図は、今回調査した天体の1つ、NGC 7469の可視光画像(左)とNGC 7469の中心領域をアルマ望遠鏡を用いて観測することで得たHCN分子輝線の強度分布図(右、擬似カラー表示)です。中心の十字が超巨大ブラックホールの位置を示します。その周囲に、HCN輝線放射が密集している領域 = 高密度ガス円盤が見えます。これは、銀河全体の100分の1程度の大きさです。Credit: 東京大学, All rights reserved.