地球サイズの望遠鏡でブラックホール撮影に挑む【1】「不可能」への挑戦

アルマ望遠鏡は、世界中に散らばる多くの電波望遠鏡と協力して、これまでにない挑戦を始めます。ブラックホールの「撮影」です。2つの実験的な観測プロジェクト、イベント・ホライズン・テレスコープ(Event Horizon Telescope: EHT)と、グローバル・ミリ波VLBIアレイ(Global mm-VLBI Array: GMVA)の一員にアルマ望遠鏡が加わることによって、地球サイズの巨大な電波望遠鏡を構成し、天の川銀河の中心に潜む超巨大ブラックホールの「影」を写し出すことに挑みます。

これらのプロジェクトには、アルマ望遠鏡の他に、南極からハワイ、ヨーロッパまでの数多くの電波望遠鏡が参加します。アルマ望遠鏡は、参加する望遠鏡の中では最も大きく、感度がよいため、この画期的な観測を成功させるための非常に重要な鍵を握っているといえるでしょう。GMVAの観測は2017年4月1日~4日、EHTの観測は2017年4月5日~14日に予定されています。(時刻はいずれも世界時)

この観測では、すべての望遠鏡が同時に対象天体を観測しなければいけないため、チリから見て地球の反対側に位置する日本の電波望遠鏡は残念ながら参加しません。しかし、日本の研究者も数多く参加しています。

「不可能」への挑戦—地球サイズの望遠鏡でブラックホール撮影に挑む

EHT/GMVAに参加する電波望遠鏡の分布を表した画像。緑色の線で結んだのがEHTに参加する望遠鏡、黄色の線で結んだのがGMVAに参加する望遠鏡です。
Credit: ESO/O. Furtak

今回の観測で、かならずブラックホールの影が撮影できるという保証はありません。技術的にも極めて困難な観測であり、観測手法やデータ較正・処理の方法など、数多くの課題が残されています。しかし、天文学において重要な一歩を踏み出すチャレンジであることに違いはありません。そこで、この記念碑的なプロジェクトの中身や関連する研究について紹介する連載記事を、アルマ望遠鏡を運用する国立天文台と欧州南天天文台、米国立電波天文台、合同アルマ観測所が協力して作成していくことにしました。未踏の高みに挑む科学研究がどのように進んでいくのかを実感していただくとともに、「ブラックホールはなぜこんなに興味深いのか」「そもそも電波望遠鏡はどうやって宇宙を調べているのか」「天の川銀河の中心にある超巨大ブラックホールについて、我々はどこまで理解しているのか」などといった疑問にもお答えします。

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