2018年4月、アルマ望遠鏡の観測データをもとに執筆された論文が、1000本に到達しました。記念すべき1000本目の論文は、ニューメキシコ州立大学のアレクサンダー・テレン氏らが執筆した”Spatial variations in Titan’s atmospheric temperature: ALMA and Cassini comparisons from 2012 to 2015”(タイタンの気温の空間変動:2012年~2015年のアルマ望遠鏡とカッシーニ探査機の比較)という論文です。
アルマ望遠鏡による科学観測は2011年に開始され、最初の論文は2012年に発表されました。論文数は速いペースで増加を続け、直近の1年では300本以上の論文が発表されました。つまり、アルマ望遠鏡のデータを基にした論文が平均で1日1本程度出版されていることになります。
国立天文台、米国立電波天文台、欧州南天天文台が共同で管理しているアルマ望遠鏡論文データベースには、アルマ望遠鏡のデータを使った多くの論文が登録されています。このデータベースは、アルマ望遠鏡サイエンスポータルや欧州南天天文台のウェブサイトからもアクセスできます。このデータベースには単に論文情報がまとめられているだけではなく、アルマ望遠鏡の観測データアーカイブとも紐づけられているため、あるデータをもとにどんな論文が書かれているかもすぐに把握できます。データアーカイブからデータをダウンロードして使う研究者にとって、これはとても便利な機能といえます。
アルマ望遠鏡では観測提案を毎年募集し、審査を通過した提案の観測が実行されます。得られたデータはまず提案者に渡されますが、その1年後にはデータアーカイブで公開されて全世界の研究者が自由に利用できるようになります。これは、膨大な情報を含むアルマ望遠鏡データを公開することによって成果を最大化することを目指した仕組みです。ひとつのデータから複数の発見がなされたり、あるいは当初の目的とは異なる切り口で利用されたりすることもよくあります。1000本目の論文も、こうしたアーカイブデータを基にしたものでした。論文で使われているタイタンのデータは、望遠鏡の較正のために2013年から断続的に取得されていたもので、副産物的なデータからも新発見が生まれることがあるのです。