オリオン座の一等星ベテルギウスの姿を、アルマ望遠鏡が視力4000を超える超高解像度でとらえました。ベテルギウスは、その一生の終末期である赤色超巨星の段階にあり、太陽のおよそ1400倍の大きさにまでふくらんでいます。アルマ望遠鏡が撮影した画像では、星表面の一部で電波が強くなっており(画像内の白い部分)、周囲より1000度ほど高温になっていることがわかりました。また画像左側には、少しふくらんだような構造も見えています。
超高解像度観測で調べる星の表面
夜空に見える星は非常に遠くにあるので、望遠鏡で見てもふつうは点にしか見えません。しかしベテルギウスは、地球から約500光年と比較的近い位置にある上、太陽の1400倍(太陽系で言えば木星の軌道のあたり)にまで膨らんでいるため、非常に高い解像度の観測で表面の模様を調べることができる数少ない星のひとつです。 アルマ望遠鏡が見たのは、可視光で見た時のベテルギウスの表面(光球)よりもやや上空の領域から放たれる電波で、電波強度から推測された平均温度はおよそ2500度でした。ベテルギウスの光球の温度は約3400度ですので、上空は光球表面より1000度ほど低温ということがわかります。一方で画像に写し出されているとおり、アルマ望遠鏡で見えている領域の一部は周囲より高温になっています。これは、ベテルギウス内部から高温の物質が沸き上がる対流現象によるものではないかと研究者は考えています。ベテルギウスの表面の超高解像度観測は、一生の終末期に巨大星の内部でどんなことが起きているのかを知る手がかりを私たちに与えてくれます。
論文・研究チーム
この観測成果は、O’Gorman et al. “The close circumstellar environment of Betelgeuse
V. Rotation velocity and molecular envelope properties from ALMA” として、ヨーロッパの天文学専門誌「アストロノミー・アンド・アストロフィジクス」に2018年に掲載されました。