アルマ望遠鏡計画の監督・統制機関であるアルマ評議会は、アルマ望遠鏡の能力を飛躍的に向上させる『アルマ望遠鏡将来開発ロードマップ(英語版PDF)』を2017年11月に承認し、このたびその内容を公表しました。
アルマ望遠鏡は、その高い解像度と感度でこれまで見えなかった宇宙の姿を次々と明らかにしてきました。若い星のまわりで惑星が生まれつつある現場の詳細な構造を明らかにしたり、130億光年以上彼方の銀河を次々と検出しそこに酸素や塵を発見したり、また星形成領域にさまざまな有機分子を発見したりと、多くの成果を挙げています。
アルマ望遠鏡が所期の性能をほぼ達成したことを受けて、2020~2030年にかけてアルマ望遠鏡の性能をさらに向上させ、さらに天文学研究を進展させるための議論が行われてきました。将来開発ワーキンググループを中心に行われた検討では、これまでのアルマ望遠鏡や他の研究成果をもとにして2020年代に天文学はどのような謎に立ち向かうべきか、そのためにアルマ望遠鏡はどんな性能を持つべきか、そのための技術開発の実現可能性はどれほどかなど、幅広い議論が3年にわたって続きました。その結果として、
● 受信機で一度に観測できる周波数帯域を2倍以上に拡張させる
● 周波数帯域拡張に合わせ、関連するエレクトロニクスおよび相関器の性能を向上させる
の2点を、最も優先度の高い開発項目として位置づけました。これが実現することで、例えば遠方銀河の距離を決める観測や、さまざまな分子が放つ電波を一度にとらえる観測、塵が放つ電波の高感度観測などの効率が大きく向上します。
また、詳細な科学的・技術的検討を継続する開発項目として、
● アンテナの展開範囲を2~3倍に拡大
● 受信機を複数画素にする焦点面アレイの開発
などが挙げられました。アンテナの展開範囲が拡大されればそのぶん解像度は向上し、例えば数多くの若い星のまわりで地球型惑星が誕生する現場を詳細に観測することが可能になります。また焦点面アレイの開発は視野の拡大につながり、遠方銀河を含むさまざまな観測対象に対して観測効率が飛躍的に向上します。
アルマ望遠鏡はすでに大きな成果を挙げていますが、この将来開発計画によって、天文学研究の進展をこれからも強力に牽引し続ける存在となることを目指しています。