国立天文台で特に顕著な業績を挙げた職員に対する平成29年度国立天文台長賞が、チリ観測所に所属する以下の2つのグループに送られました。
<研究教育部門>
受賞者:永井洋 特任准教授、中西康一郎 特任准教授、亀野誠二 教授、Charles L. H. Hull助教
受賞理由:ALMA偏波観測の実現とミリ波サブミリ波偏波観測サイエンスの推進
研究教育部門の受賞理由となったのは、アルマ望遠鏡による偏波観測です。偏波は特殊な環境で発生するので、一般的な電波観測では手に入らない情報を得ることができます。偏波の観測で得られる情報のひとつに、宇宙空間に存在する磁石の力(磁場)が挙げられます。宇宙にもいたるところに磁場が存在しており、巨大ブラックホール周辺から放出される超高速のガス流や、赤ちゃん星へのガスの落下など、さまざまな現象に磁場が大きな影響を与えていると考えられています。一方で天体からやってくる偏波はたいへん微弱なため、観測は簡単ではありません。アルマ望遠鏡は非常に高い偏波の検出精度をもち、微弱な偏波の観測にも高い能力を発揮します。今回受賞した4名は、試験観測やデータ較正手法の確立を通してアルマ望遠鏡を使った偏波観測の実現に大きく貢献し、また実際にさまざまな天体で偏波観測を行って研究を推進したことが高く評価されました
参考:2016年7月19日付最新情報「アルマ望遠鏡、世界最高感度の偏波観測を達成」
<技術・開発部門>
受賞者 :小杉城治 准教授、中里剛 研究技師、杉本香菜子 特任専門員
受賞理由:ALMA単一鏡データ解析パイプラインの開発
技術開発部門の受賞理由となったのは、アルマ望遠鏡のデータを自動的に処理するソフトウェア(パイプライン)の開発です。アルマ望遠鏡では、観測者が実際に現地に行って望遠鏡を操作することはなく、専門のオペレータが観測を行い、得られたデータは別の専門チームが処理を行います。そして、処理済みのデータを研究者に配布するのです。このデータ処理の効率を上げるため、アルマ望遠鏡プロジェクトでは自動的にデータ処理を行うパイプラインソフトウェアを開発し、実際に使用されています。パイプラインソフトウェアは日米欧のチームが共同で開発していますが、特に日本が開発を担当したアタカマコンパクトアレイ(モリタアレイ)の12mアンテナから出力されるデータの処理に関する部分は、日本が主導して開発を行いました。今回受賞した3名はこのソフトウェア開発をリードし、アルマ望遠鏡の科学成果創出を強力に支援したことが高く評価されました。