アルマ望遠鏡の新しいデータ伝送システムに関する基本設計審査が実施され、無事に審査を通過し、次の詳細設計フェーズへ進むことが認められました。この新システムは、アルマ望遠鏡の性能を大幅に向上させる広帯域感度アップグレード (WSU)の一環として開発されています。WSUでは受信機をはじめとする多くのコンポーネントの性能向上が進められており、このデータ伝送システムは、観測で受信した膨大な信号を高速で相関器・分光計に伝送する重要な役割を果たします。
開発は国立天文台が主導し、米国国立電波天文台と協力して進めています。また、国内では情報通信研究機構フォトニックネットワーク研究室の協力も得ています。開発チームの目標は、1.2 Tb/sのデータレートに対応可能な新しいデータ伝送システムを実現することです。これは、現在の最大データレートである120 Gb/sの約10倍に相当し、さらに1.6 Tb/sのデータレートをサポートするという挑戦的な目標も掲げられています。
基本設計審査は、システムの技術的な妥当性と開発の進捗を評価する重要なプロセスです。開発チーム、国内外の審査員や関係者が一同に会して議論を行う審査会は、2024年10月2日から4日に国立天文台三鷹キャンパスで実施されました。審査会では、開発チームがシステムの設計や性能検証試験の結果などを詳細に報告しました。参加者の間では活発な議論が交わされ、技術的な側面について建設的なフィードバックが数多く寄せられました。また、同キャンパス内の国立天文台先端技術センターでは、データ伝送システムに用いるコンポーネントを使ったデモンストレーションが披露され、開発チーム以外の関係者がWSUで用いられる装置とその動作を初めて目にする貴重な機会ともなりました。
審査委員会からは、達成が容易ではない技術要件に基づきシステムを設計する中で、開発チームが数々の困難を克服した点も高く評価されました。今回の基本設計審査の通過を踏まえ、開発チームは次の詳細設計フェーズに移行し、WSUシステムの実現に向けて更なる進展を目指します。
開発チーム主要メンバー
石井 峻(国立天文台)、鎌﨑 剛(国立天文台)、クリストフ・ジャック(米国国立電波天文台)、
海老原 栄一(国立天文台)、藤枝 美穂(情報通信研究機構)