テキサス大学オースティン校NASAハッブルフェローの藤本征史さん、 アルマ望遠鏡のアーカイブ、アルマ望遠鏡を使った研究で 2022年度日本天文学会研究奨励賞を受賞しました。

テキサス大学オースティン校NASAハッブルフェローの藤本征史さんが、2022年度日本天文学会研究奨励賞を受賞しました。日本天文学会研究奨励賞は、優れた研究成果を上げている35歳以下の若手天文学者に対して授与される賞です。

受賞対象となった研究テーマは「電波と可視光観測による初期銀河と銀河周辺物質の新描像の提案と確立」です。

藤本氏は、それまで培っていた大量のアーカイブデータの解析技術を生かし、複数の銀河のデータを重ね合せる処理を行うことで、従来に比べて極めて高感度データを得ました。その結果、星起源の可視光の連続光に比べ、約5倍に至る巨大な炭素ガス雲が宇宙初期の銀河周りに存在することを発見しました。元々存在していなかった重元素が銀河を超えて存在していることから、
銀河形成の早い時期に、銀河内部のガスを外部に放出する強力なアウトフローが起こっていることを世界に先駆けて示す結果となりました(参考:2019年12月16日プレスリリース「宇宙初期に予想外の巨大炭素ガス雲を発見 -アルマ望遠鏡がとらえた宇宙最初の環境汚染-」)。

また日本天文学会による受賞理由では(下記)、その後、国際的な場で幅広い分野に研究を展開しながら活躍している業績も、高く評価されています。

日本天文学会研究奨励賞受賞理由一部抜粋:

「藤本氏はALMAのアーカイブを用いた大規模データによる統計的研究を展開し、それを足掛かりに[CII]輝線ハローの研究、重力レンズを用いた研究、QSOの研究など、国内外の多くの共同研究者と新しい研究の方向性を開拓し、幅広い分野で研究を遂行する能力があることを示した。
さらにALPINE計画やALCS計画のALMAによる大規模な国際共同研究に入り、中心的な役割を果たし、優れたコミュニケーション能力を生かして高いインパクトをもたらす研究を行えることも示してきた。これまでの成果として共著論文を含めて92編もの論文を出版し、その中には研究指導をした学部生が主著者となった論文も含まれている。自身がPIとしても多くのALMAの観測提案が採択されると共に、JWSTを用いた観測時間も獲得しており、これからのさらなる活躍が期待される。」

今回の受賞を受けて藤本氏は以下のようにコメントしています。
「このような栄誉ある賞をいただけることになり非常に光栄です。海外の場で研究を進めれば進めるほど、今日の私は、すばるやアルマのような最新鋭の望遠鏡へのアクセス (実地観測やその最新データの活用) に留まらず、時には新たなプロジェクトを自ら立案し牽引する機会提供、そしてキャリア・年齢を問わず同じ目線で議論をたたかわせてくださる、日本の優れた天文学教育・研究の環境があったからこそだと日々感じます。引き続き、場所を問わず、世界最先端の研究を楽しみながら、私も広く宇宙物理・天文学分野の発展に貢献して、いただいたバトンを次世代に繋いでいけるよう、活動を続けていきたいと思います。」

写真は、立教大学で開催された日本天文学会2023年春季年会で受賞記念講演を行う藤本氏です。

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