星の誕生時にジェットというガスの噴出現象が起こることが分かっていますが、何故ジェットが現れるかについては明確には分かっていませんでした。国立天文台の松下祐子研究員と九州大学大学院理学研究院の町田正博准教授らの研究グループは、ジェットの回転を詳細に観測し理論モデルと組み合わせることでジェットの駆動機構とその役割を特定しました。
研究グループは、OMC 2/FIR 6Bという原始星(幼年期の星)周囲をアルマ望遠鏡で観測したところ、高速で回転しながら噴出するジェットを検出しました。回転の速度と角運動量という回転に関係する物理量は、これまで回転が検出されたジェットの中で最も大きく、観測史上最大の回転を持つジェットだということが分かりました。回転速度と角運動量は従来の理論予想を遥かに超えた大きさであり、磁気駆動というモデルでのみ説明可能です。このジェットの回転は、原始星から半径3天文単位にある円盤の回転を磁場の力で遥か遠く100天文単位にある物質に伝え強制的に回転させることで実現できます。この研究から、ジェットは磁場の効果によって出現するということも明確になりました。また、ジェットによって円盤のガスは回転(角運動量)を失って中心に落下し、原始星が大人の星に成長させる役割を果たすことも明らかになりました。このような超高速回転ジェットは星が幼年期から大人の段階に移り変わる短い時間にだけ出現します。この研究によって星の成長とジェットの関係を明らかにすることが出来ました。
詳しくは、九州大学のプレスリリース「ALMA望遠鏡による超高速回転原始星ジェットの検出」をご覧ください。
論文情報
この観測成果は、Yuko Matsushita et al. “Super-Fast Rotation in the OMC 2/FIR 6b Jet”として、米国の天体物理学専門誌「アストロフィジカル・ジャーナル」に2021年7月22日付で掲載されました。
この研究は日本学術振興会科学研究費補助金(JP21K03617, JP21H00046)の支援を受けています。